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〈分子模型パネル〉新バージョン

開発物語 99.9

仮説実験授業研究会 丸山秀一

美瑛の研究会(旭川仮説サークル)用レポート         1995.8.5
改訂 札幌仮説サークル用                   8.12
豊田さんからの情報で増補改訂。

ニセコ分子模型の会                     10.14
      分子模型作りの第一人者の山田さんからアドバイスをお受けしたく小改訂。

新しい台紙を作成。ホームページ版。           1999.9.4

台紙をpdf形式にしました。ダウンロードして印刷して使えます。 10.15


先駆者たち


原案 貝田明さん                                             1987

 《もしも原子がみえたなら》で作成する分子模型の保存法として,木枠のパネルを自作し,説明を付けた紙の上に張り付けたものを考案したのが,貝田明さん(小松たのしい授業の会)です。これは,縦55センチ×横36センチのかなり大きいもので,頑丈な作りです。そこに授業書にでてくる,原子・分子模型をはりつけたもので,かなり立派なものです。この紹介を貝田さんと同じサークルの太田英一さんがされています。

改訂 野村康裕さん                                         1987

 これを改訂して,分子の説明に授業書の文章をそのまま使ったのが,貝田さんと同じサークルの野村泰弘さんです。この分子模型パネルが仮説社刊『たのしい授業』79号(『ものつくりハンドブック3』に再録)に紹介されています。

再改訂・再レイアウト 豊田泰弘さん                  1989

 このパネルを子どもたちに作成させるために,豊田泰弘さん(北海道)は,説明文の一部に手を加えるとともに,窒素分子と酸素分子の位置を,成分率グラフでの位置に合わせて入れ替えました。さらに,B3版のパネルは大きすぎて作るのが大変なものでしたので,パネルから分子の構成を示す原子模型をのぞいて,分子模型だけにして,サイズもA4に縮小しまた。これがその後の分子パネルの標準となっています。
 豊田さん作成のものは,木枠がカッターで容易に切断できるような薄いものになっていて,通称「分子弁当箱」と呼ばれています。「分子弁当箱」では,分子模型を半分に切断しており,材料の節約にもなっています。

加藤版 加藤一彦さん

 この豊田さんのバージョンの台紙を使って,これをA4よりも大きく拡大し,ベニヤで裏打ちし,台紙は模様の入った壁紙,細工の入ったビニールとめの木でまわりを囲って,金属チェーンをフックにした豪華なものを作ったのが,加藤一彦さん(北海道)です。これは,とにかく見かけが立派で室内飾りとしても最高のものです。


 僕の新しい版も,以上の先駆者のみなさまの模倣より始めました。先駆者の研究に敬意を表します。特に,「分子模型弁当」作りを手伝わせていただいた豊田泰弘さんに感謝申し上げます。豊田さんは,このパネルの詳しい発想の記録を所持しておられ,パネル開発の歴史をたどるのに,大変参考になりました。また,ケースについてアドバイスくださった榊原郁子さん(北海道教育大学)にもお礼申し上げます。

そのほかのバージョン

 以下は,豊田さんから教えていただいたことです。

 北海道の林秀明さんと菱直幸さんは,一枚の紙を組み立てて枠になるようにしたものを発表しています。これは実物を見て,紙なので強度が弱いということと作るのが難しいと僕は感じました。

 大久保卓身さん(岩手)は,箱の製造メーカーに,A4の箱を作らせて,それをケースにして分子モデルパネルセットとして販売していたそうです。また長野の北村秀夫さんは,菓子折の箱等に使うスチレンで枠を作ることを発表しているそうです。これらは,実物を見ておりませんが,箱や枠の入手が難しそうです。

 また豊田さんの台紙をもとに分子模型をコンピューターを使って描いたのが,千葉の塩野広次さんです。

僕の開発物語

本当の「弁当箱」はできないか

 すべてのパネルでは,模型が接着剤で固定されているため,取り外すことができません。「本当の弁当箱のように,1億倍の模型をそのまま入れるだけで,自由に取り出せるようなものができないか」と常々考えていました。
 ここで問題となるのは,「容器」です。貝田・野村バージョンのように頑丈な木枠を加工する技術も気力も僕にはありませんでした。そこで探してみたのが,本物の弁当箱です。サイズ的には,いくつかいいものがあって買ってきてみたのですが,どうやってみてもすっきりしません。そこでこのアイディアは捨てることにしました。

加藤バージョン作成へ向けて

 そこで僕は,加藤さんのバージョンで作成してみることにしました。しかし,壁紙やふすま紙は,今は,みんな表面がビニールで加工されていて,でこぼこしているものばかり。これでは,コピーのトナーがのりそうにありません。
 台紙は,白一色よりも模様があった方がやはりたのしい感じになるのです。そこでふと思いついたのが,事務用品で出ている模様の付いたA4の用紙でした。中でも,僕が結婚式の案内状に使ったものは,空と雲の絵が印刷されているもので,「空気中の分子」の背景にぴったりではないかと思えました。そこで,台紙をこの紙にして,A4版にした加藤バージョンを作成しました。台紙の説明文は,さらに簡単にしましたが,ひらがなが多かったのを漢字になおしたりしました。ルビはやめました。また豊田さんのものから「製作者名」の欄がなくなっていたので,それを復活させました。さらに,タイトルの部分を金紙に印刷するようにして,アクセントを付けました。

分子模型を取り外しできるように

 「分子模型を取り外しできるようにしてパズルとしても遊べるようにできないか」その考えを捨てきれなかった僕は,ステキなアイディアが浮かびました。分子模型にゴム磁石を付けて,台紙に金属を張れば,それが可能になるのです。
 片面に接着剤が付いているコクヨのマグネットシート(マク-345)が手元にあったので,それを分子模型に貼って,台紙には,画鋲を刺しました(針をペンチで取り除いてボンドで止めると良い)。こんな簡単なことで,僕の夢は実現したのです。しかし,どうもこれは独りよがりのようで,あまり評価されないものでした。

技術が要求されるパネル作り

 一応完成はしてみたものの,作るのが大変難しいことを実感しました。ベニヤ板を切ったり,細い木の先端を45度に切断したりする作業は,適当にやったのではきれいなものができず,それなりの技術を必要としていたからです。これでは,生徒のみなさんにやってもらったときに,上手下手が明確に出てしまいます。ここで僕は,パネルの自作を断念して,できあいのケースで代用できないかと考え始めたのでした。
 そのとき,別の研究でのケースの件で,教育大学の榊原先生から,プラスチックケースのカタログをいただいていました。そこで簡単にケースを探すことができました。ただHEIKO社のケースでは,B5ジャストのサイズはあるのですが,A4ジャストのサイズのものはありません。A4が入るサイズのものは,大きさがA4よりもかなり大きくなってしまうのでした。でも,B5では説明の文字が余りにも小さくなってしまうので,A4よりも大きいサイズのものを購入することにしました。

完成まで

 A4よりもケースが大きいので,ケースの大きさに合わせた台紙の上に分子の説明が印刷された紙を貼ることにしました。ケースの大きさに合わせた台紙も,おしゃれな紙を使うとさらに見栄えが良くなります。
 木枠のパネルと違って,完成品のプラスチックケースを使うわけですから,誰にでも作れて,見栄えも良いものがついに完成したのです。


製作方法

 必要なもの(分子模型制作に必要なものを除く)

 台紙    「グラフィックアート」DP501「空」

       ユニオンケミカー(株) 一枚30円ぐらい 事務用品店で

       10枚セットで300円のもあり。(ヨドバシカメラ)

 台紙補強用 画用紙やマーメイド紙など厚めで腰のある紙を好みに応じて

       ケースの大きさに切っておく。

 ケース   クリスタルボックス V-20などHEIKO社 270円ぐらい

                  V-20は組立式で,10枚セットで売っている。かさばらなくて

                  良い。パッケージショップにて。箱式は,かさばって運搬保存

                  が大変で,25枚セットで販売。

            金紙    


◎原版を台紙にコピーする。

◎台紙を補強用の厚紙に,スプレー糊で貼り付ける。

 (まわりを汚すので,新聞紙を敷いてから。)

◎ここで台紙の氏名欄に名前を書いておく。

◎分子模型をそれぞれ作って,台紙に木工用ボンドで貼り付ける。

◎タイトルをコピーした金紙を張り付ける。

◎ケースに入れて完成。

 金紙の部分は省略してもかまいません。簡単に見栄えの良いものが作れます。

実際に作ってもらって

 高校定時制の生徒のみなさんに作ってもらいました。僕が作った見本を見せて,「これ,作ってみない?」と聞いたら,みなさんが「作る!作る!」とうれしい反応。
 おもしろいことに,男性の方が丁寧に作ろうとして時間がかかっていました。色塗りなんか,5回以上も塗り重ねているのですから。女性は,ささっとやってしまっていました。
 みなさんが完成したところで,持ち帰り用の袋を渡しました。でも,みなさんは,「これ,本当にもらっていいの」と聞くのです。生徒のみなさんが作ったものは,それはもう立派なものばかりでしたから,僕も喉から手がでるぐらいに欲しかったのですが,「もちろん!あなたが作ったんじゃない。でも,もしくれるというのなら,僕は喜んでもらうけど・・」と答えました。すると,「先生,俺,これ一生大事にするよ。」と20代の塗装工の柏倉君。「こういうのいいですねぇ。本当に,原子が基本なんですね。子どもにも見せて自慢してやります。」と40代の主婦の高橋さん。そのほかにも,「部屋のどこに飾ろうかな」とか,みんな大事そうに持って帰ってくれました。

 なんたって,世界にたった一つのものだから・・。

 「これ,教材費でしょ」「まさか!僕からのプレゼントですよ。」「先生も,大変だね。」「でも,人数少ないし,僕は人にものをプレゼントするのが好きなの!」
 一人当たり発泡スチロールや塗料代も入れて500円ほどです。まあ,40人のクラスが3クラスもあったら泣いちゃうけど(普通高校ではそうだった),ここでは全員で40人だから,これぐらい安いもんです。全く文句を言わない女房にも感謝して。


■関連の話題

B5版作成について

 B5版の利点は,小さいことと,ケースなどの費用が安くなることです。字をこれ以上小さくしたなかったので,レイアウトを試行錯誤しながら,ようやくB5版のが作れました。ケースもB5用のを使用しました。しかし,出来あがってみると,やはり小さいためか豪華さというものがあまり感じられないのです。手間は大した変わらないのに,A4大のサイズのものの方が,かえって余白のため立派に見えるのです。「作って良かった」と思えるのは,圧倒的にA4大の方でした。

分子模型作成に適した塗料は何か

 僕は,分子模型の色を塗るときは,水性プラカラーと水性アクリル絵の具を使っているのですが,一長一短です。ポスカは,仕上がりが悪いので良くないです。
 水性プラカラーは,大変使いやすいものです。瓶に入っているので扱いやすいのと,乾きが速いので簡単に二重塗り三重塗りができるのです。また光沢もとてもよく,5回ぐらい重ね塗りすると,まるでプラスチック製品のように見えます。ただ発色が良くなく,暗い感じの色になるのが欠点でしょう。
 アクリル絵の具は,画材ですから,発色や色の種類が豊富です。大変鮮やかな色で塗ることができます。その反面,光沢は良くなく,また厚く塗らないと,発泡スチロールが絵の具をはじいてしまって,塗りにくいです。乾きも良くないので,重ね塗りするときは,待ち時間が必要です。完成したら,クリアラッカーを塗ると光沢がでてきれいです。
 そのほかの塗り方では,小林眞理子さんが「絵の具に洗剤を混ぜて塗る」という方法を『たのしい授業』で紹介しておられますが,やはり絵の具は光沢がないです。また「絵の具に木工用ボンドを混ぜて塗る」という方法も聞いていますが,ボクはやってことがありません。
 単原子分子には蛍光色を使うと見栄えがよくなります。

・分子模型の作製について

 この模型では,分子を半分に切ります。分子模型作りの道具として,いくつかの定木が製作販売されていますが,半分に切断するための定木というのは,あるのでしょうか。

新しい台紙を作成

・新しい台紙を作成
 A4の台紙として使っていた用紙が生産中止になり,ケースにピッタリ合ったサイズの台紙を自作することにしました。これで「台紙にコピー」と「A4台紙を大きな台紙に貼り付ける」という二つの作業がなくなります。「空気中の分子」というイメージを残すために,背景は雲の模様にして,その周りを額縁のように,分子のイラスト(泉斗音美さん作成)で飾りました。また製作者の名前を初めから台紙に印刷しています。この台紙は,厚手の紙に印刷したのですが,まだ強度不足だったため,さらに厚紙に張りました。それでも厚手の紙を台紙に使ったのは,のりの水分によって紙がシワになることがなくよかったです。
 また,いままでは台紙の貼り付けやケースに合わせてのカットは生徒さんたちにやってもらっていたのですが,仕上がりの差が大きいため,全部ボクがやることにしました。これで仕上がりがとてもよくなりました。
 さらにケースの厚みが十分にあるので,分子の半分の大きさではなく,分子そのままを貼り付けることにしました。これが準備の手間や製作の手間を驚くほど簡単にしました。

左の図をクリックすると大きな図(bento2.gif 192kB)を見ることができます。

 分子のイラストを描いていただいた泉さんは,ご自分のホームページ(
「ドレミ A GO GO」)でも多くの分子のイラストを公開されています。リクエストも受け付けてくださいます。ボクのホームページのイラストもほとんどが泉さん作成のものです。いつも感謝です。

 上の図をpdf形式にしたものを作成しました。元の画像とほぼ同じ品質で印刷可能です。また一切のセキュリティをかけていませんので,授業で使われる限り,自由に改変したり印刷することが可能です。A3用紙に印刷するとちょうど良いサイズになっています。

 atomDaisi.pdf 560kB  (左のファイルネームをクリックするとダウンロードします。)


 このファイルを見たり印刷したりするためには,Acrobat Readerという無料で配布されているソフトが必要です。Acrobat Reader4.0 以上を使ってください。3.0では不具合が出ると思います。Acrobat Readerは,雑誌の付録などで入手できるほか,下記のホームページから無料でダウンロード可能(5MB)です。

http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep.html


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