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心も体もポッカポッカ 〈ポッカイロつくり〉の授業
〈ポッカイロ〉 の授業記録
と,生徒のみなさんの感想

また
「たのしい授業は,子どもたちを優しくする」(豊田康弘さん)
という追試レポート
                
1994.1 丸山 秀一


 僕は,高校の理科教員ですが,ものづくりも大好きです。だって,なんかとってもいい雰囲気になるからなのです。それに僕が教師になった理由の一つが,「生徒さんに(ちょっと強制的にでも)プレゼントできるから」というのがあるのです。「プレゼントする喜び」僕が生徒さんたちにプレゼントするだけでなく,彼らも誰か暖かい人にプレゼントしてそんな喜びを得ることができる・・そんなことができそうなものづくりなのです。
 最初は「こんなの教科書的だ」と自信がなかったものですが,生徒さんたちの評価に気をよくして,また『たのしい授業』にも掲載されたので,『たのしい授業』には載ってなかった,授業の様子と生徒さんたちの感想を紹介いたします。

          〈ポッカイロ〉の作り方は『たのしい授業』93.12月号をどうぞ

暖かいプレゼントはいかがですか

 今年も寒い季節がやってまいりました。こんな季節に5年前(*1)から始めたカイロ作りの授業。僕は,自分ではたいして「いい」と思っていなかったのですが,今年も生徒のみなさんには大好評でした。今までの「ものつくり」には全く参加しなかった生徒さんまでもが懸命に作っているのです。そして,評価は今年も「たのしさ度100%」(*2)。これは,もう自信を持って他の人たちにも紹介してもいいみたいです。では,「暖かいプレゼント」の授業をどうぞ。

 「また〈折り染め〉(*3)やるの?」
 「〈おふだ〉(*4)をつくるの?」

 机の上に用意された障子紙を見て生徒さんたちが言います。

 「先生,このおふだね,きくんだよ。いままで自動車学校の卒業検定受けた奴は,みんな,このおふだを持って受けて合格してるんだよ。」

 くしゃくしゃになったおふだを大事そうに手帳から出して教えてくれました。

 「今日はね,これです。まず,プリントを見てください。」

注記
*1 この文章は92年のものです。
*2 仮説実験授業の評価をするときに,「たのしかったかどうか」を5段階で生徒さんに評価してもらって,評価5と4の合計の割合を「たのしさ度」としています。これは,宮地祐司さんのまねです。
*3 『ものづくりハンドブック2』の斉藤敦子さんの記事をどうぞ。
*4 折り染めをした紙を使っておふだを作るという僕のプランです。高校3年生のみなさんに好評です。できあがったものもとっても素敵です。

 〈カイロ作り〉のプリントを配りますが,だれも読みません。そしてひたすら,「せんせー,どうやるのー」と聞くみなさん。
 ふと見ると,いつもはもの作りなどは全くやらない生徒さんたちまでもが懸命になって作っていました。

 「こんな簡単なものでできるんだ!」

 みなさんは簡単にできることに感動してくれています。またカイロの構造にも興味があったようです。

     (名前の後の数字は「たのしさ度」です。)

自分でカイロが作れるなんて

カイロってあんなに簡単にできるものなのですねぇ。
店で買うより,得をした気分でした。先生は,なんでもできるからいいなぁ。 すみれさん 5

カイロが自分でできるとは思わなかった。自作カイロの温度や時間のことを考えると,カイロ会社の苦労がわかる。あったかい贈り物をありがとう。
   しょうご君 5

カイロがあんな簡単に作れるとは思わなかった。本当,おもしろい体験をした。 森本君 5

カイロの中のものを初めて見ました。あんなもので熱くなるのを知ってとても勉強になりました。情報処理の時間は,いろいろなことをやってとてもたのしかったです。 中田君 5

ポッカイロ作りはとてもたのしかったです。カイロの構造がどうなっているか,カイロ作りをしてよくわかりました。売っているカイロをさいて,中身を取り出したことがあるけど,黒いものしか入っていなかったと思う。でも自分でカイロを作れるなんて思ってもみませんでした。
   藤田君 5

ポッカイロ作りは,意外と,とてもたのしかったです。普段売っているカイロは,こういう構造になっているんだなぁと感心しました。
それに勉強になりました。    あきえさん 5



 僕はただ「ものつくり」をしただけなんですか,みんな「勉強」しちゃっているのにビックリです。


プレゼントしてみたら?

 できたカイロを使うのがもったいようで大事そうに見ている生徒さんがいました。そこで

 「なんぼでも作っていいんだよ」というと,
 「えっ,いいの?!」

とニコニコしながら次の製作に入っていました。そこで僕は,こんなアドバイス・・・

 「プレゼントすると喜ばれるよ。お父さんとかお母さんにあげたら,お小遣いくれるかもよ。」

 すると・・・

 「こんなんじゃだめだよ。」
 「親にプレゼントなんかしないよ。」

という,みなさんの冷たい反応に僕はタジタジ。

 しかし,生徒のみなさんの感想を読むと・・・これが,しっかりプレゼントしているのです。

カイロを4つも作りました。少しでも多く入れればもつと思い,海水(食塩水のこと)を少し多く入れたら,セロテープのところがはがれてしまう欠点がありました。それをもらったとうさんのポケットはゴミとなり,ちょっとミスでした。けどポケットはカイロの袋がわりとなり,「あたたかった」とほめてくれました。次の日,木の粉を持ってきて,「また作れ」と無理なことを注文してきたです。                けんじ君 5

私は休んでいて作らなかったのだけど,とーーってもあったかい〈ポッカイロ〉をもらいました。だれにもらったかは・・・秘密だよーー。
   ゆみこさん 5


でも,僕は誰からもらったのか知っているモンネ。それは・・・

私は彼女にあげるといったら,「いらない」と言われました。でも,むりやりやりました。残りの2つのうち,ひとつは下川さんの受験の御守りとしてあげました。もうひとつは,大事に家においています。
    こうじ君 5

カイロはとても暖かかった。おもしろかった。弟にやり,喜ばれた。
    沢君 5

とっても,とってもたのしかった。
家に帰ってから,母さんにあげた。喜んでくれた。
    まさこさん 5

自分は3つぐらい作って,ひとつはお母さんに,もうひとつは自分の女にやって,もうひとつは自分の女の妹に,そして最後は自分で使いました。この季節にはとってもいいものでした。 たかのぶ君 5

2つ作りたかったけど,時間がなくてひとつしか作れなかった。でも,2組の赤石さんにプレゼントしたら,とても喜んでくれて「けっこうあったかかったよ」と言われ,うれしかった。
普通のカイロよりも,まごころがこもっていていかったと思う。
   きみえさん 5


「たのしい授業は子どもたちを優しくする」

 普段のツッパリ君からは想像できない「お母さん」なんて言葉を読むと,なんか僕も「あったかく」なってきます。プレゼントって素敵だな。僕が教師になったのは,絶対に「たくさんの人に(ちょっと強制的に)プレゼントできるから」という理由もあるんだろうな。カイロの材料を買いに店をまわっているときの幸せな気持ちといったらないのです。

花屋さん 「植えかえですか」
僕    「いいえ,ちょっと学校で,違うものにつかうもので・・」


 僕はにこにこしながら答えます。そして,この喜びを生徒の皆さんにも体験させてあげたくて,僕は「誰かにプレゼントできる〈ものつくり〉」が大好きなのです。

 札幌の豊田康弘さんがよく「たのしい授業は子どもたちを優しくする」といわれます。僕は,たのしい授業をするたびに「まさにそうだなぁ」と実感しています。〈七夕飾り〉なんかやったら,クラスの雰囲気がいっぺんでほんわかしたものに変わってしまうのですから。


進まない研究?

 さて,僕はカイロを作ってもらう前に,一つのお願いをしました。

 「使ってみたら,どれぐらい暖かかったか教えください。穴の数と鉄粉の量も教えてね」
 つまり,生徒さんのデータを集めて,「持続時間の研究」をしようと思っていたのです。ところが,データはさっぱり集まりませんでした。
 授業の後,大事そうにカイロを持っている生徒さんをたくさん見掛けました。どうも「もったいない」らしく使えないみたいなんです。

ポッカイロはひとつしか作れなくて,誰にもあげていません。カイロはまだ使ってもいません。なんだか使おうと思うともったいなくなってしまって・・。 えりこさん 5

誰にもあげずひとりじめをしています。でも,とてもたのしかったです。
みきさん 5

ポッカイロ作りはおもしろかった。もったいなくていまだに使っていない。
小山君 5

もったいなくて,まだ使っていませんが,これからも使うことはありません。感想は,いつもネタが尽きなくておもしろい。
                       えみこさん 4

ポッカイロの授業は,メチャメチャおもしろかったです。
手作りのポッカイロはもう作れないと思ったので,私の一番の親友にプレゼントしました。
手作りのポッカイロは,もったいなくて使えません。親友も,そういって机の中にしまってあるそうです。みちこさん 5


 というわけで,開ける穴の数や鉄粉の量による持続時間の研究(?)は,データがなかなか集まらず,全く進んでいません(「自分でやればぁー?」)。でも,おおよそ,15gの鉄粉を入れた場合,穴の数によるのですが,短くて15分(内側の袋なし),長くて6時間(穴3つだけ)ぐらいのようです。
 これだけの時間暖まるわけですから,このポッカイロはちゃんと実用になります。


暖ったかぁーい理由

とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,とても,暖かかった。
  田村君 5

寒い北海道には欠かせないカイロですから,作り方を覚えて,得をしたような気分です。今度は自分の家で作ってみます。 ゆみこさん 5

僕は一個しか作らなかったけど,朝開けて昼ぐらいまで暖かかった。僕はいつも朝はバス通なので,その日はバスを待っているとき,とても暖かくて,丸山先生に感謝! 藤君 5



 どうしてそんなに「暖かい」のでしょうか。それは・・・


普通のカイロより,暖かかったと思います。それはどーしてか?というと,”愛情”がプラスされているからだと思います。
ちえさん 5

そして・・

ポッカイロ作りがいままでの中で一番おもしろかった。
みずまさ君 5



 どうです?あなたもやってみませんか,あったかぁーい授業です。

 文中,生徒さんの名前は仮名です。

◎材料等お分けします。お気軽にお問い合わせください。


 〈ポッカイロ〉情報は【ものつくり】のページでどうぞ。

 
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