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追試報告

〈マッキーノ〉のすすめ
教科書授業に最適!

丸山 秀一

1993.10 札幌たの教サークル用レポート

 「教科書ビンゴ」は,かなり効果的なドリルとして,歓迎されていると思います。ボクも,試験前は,必ずと言っていいほどやってきました。
 このたび牧野英一さんのガリ本を読む機会があり,牧野さんがビンゴに代わるものとして提唱している〈マッキーノ〉に強い興味を持ち,不安でもありましたが高校生のみなさんとやってみました。それが予想以上の大成功で,みなさまにお知らせするのが,このレポートです。

1993.12  幡豆大会用

 このレポートをサークルや「仮説ネットHP」(*1)で発表したところ,かなりの反響でした。その後多くの学校で〈マッキーノ〉がされたようです。また牧野さんからお手紙をいただくこともできました。中間試験の結果も良好で,自信を持って紹介したく,全国大会に向けと,書き直すことと致しました。

1999.2 ホームページ版

 もうすっかり教科書授業はしなくなり,〈マッキーノ〉とは遠ざかってしまいました。でも,多くの人に知って欲しいと思い,ホームページに掲載するものです。



■謝辞に代えて

 〈マッキーノ〉については下記のガリ本(私製本)に詳しいです。たのしい研究をしてくださった牧野さんに感謝申し上げます。

 牧野英一 『授業書研究シリーズ1〈マッキーノ〉』
 名古屋仮説会館発行 \1000 1992.11初版(ガリ本)



■不安だった〈マッキーノ〉

 牧野さんのガリ本を読んでいたら,いちかばちか今までの「教科書ビンゴ」をマッキーノ方式でやってみたくなりました。ボクが今までやって来たビンゴとの大きな違いは,「〈教育的配慮〉がない」ことでしょう。今までは,たくさん書かせるために25マスのビンゴでしたが,マッキーノでは16マス。しかも,「予習」としてやるというのですから,驚きです。ボクは,今までは,「復習テスト」のかわりにビンゴをやっていたのです。つまり,問題を30問作って,「おみくじ」で解答者を当てて黒板で解答。そのあと25マスビンゴをやっていたのです。ところが,マッキーノは予習としてやるのです。それも「問題」ではなく,答えものった紙を渡してのビンゴです。こんなビンゴをボクはやったことがありません。どきどきしながら,スタートしたのでした。

■ビンゴの変遷
 やはり研究の歴史について明らかにしておきたいです。授業でのビンゴの変遷については,ぜひ牧野さんのガリ本をご覧ください。


■ボクの評価と生徒さんの声
 たいへんたのしいものです。ボクが心配していたことは,杞憂に終わりました。今までのビンゴよりもずっといいと思います。もう100回以上はやっていますが,生徒さんには大好評です。
 20回ぐらいやった後に,生徒さんたちに「これまでのビンゴと比べてどうですか?」と聞いてみました。

 
・ 問題用紙について
答えが書いてあるのが良い。

・16マスについて
マスが少ないところが良い。
前の方がマスが多くて良い。

・とにかく たのしい
全部いい。
たのしい。


◎年間賞の設定で飽きがこない
 いままでのボクのビンゴは,その時間だけのものでした。でも〈マッキーノ〉は,賞が年間賞なので,その時間の成績に関わらず,「またやりたくなる」もののようです。「今度は頑張るぞー!」というようなもので,毎回ほぼ全員の生徒さんが参加(*2)してくれます。

・何回もできるからいい
 一日に2回できるのが良い。
 何回もやるのがたのしい。
 毎日やるのが良い。

・賞の設定
 早上がりがだめでも,まだ二つ賞があるのが良い。
 その日の賞よりも,年間賞の方が素晴らしいと思う。
 究極早上がり賞がよい。

・ 競い合うのがたのしい
 競い合って,たのしい。毎時間がたのしみ。
 燃える!
 とっても燃えていいです。
 ビンゴになるたのしみがある。早く10ポイントを取りたいな。


◎予習の意義
 牧野さんもその著書で述べていますが,「予習の効果」には絶大なものがあります。普通「専門用語」なんか出てくるだけで生徒さんたちは嫌になるのですが,〈マッキーノ〉で慣れ親しんでいるため,授業中の反応が,それまでと全く違うのです。
 今までは,「そんなオレには関係ない」とばかりにノートも取らなかった生徒さんたちが,授業に参加(*2)してくれるようになったのですから。

・予習がいい
予習するのは,すごくいい。
予習でできるのがいい。

◎講義時間の短縮
 生徒さんの参加率(*2)があがったのは,教科書授業の講義時間が減ったことによるのかも知れません。50分も講義じゃあきてしまいます。〈マッキーノ〉は,15分ぐらいかかるので,残り35分が講義時間なのです。これぐらいなら,生徒さんもやってくれるのかも。

・授業をやらなくてすむ
授業をやらなくてすむ。

◎ドリルの効果
 同じことを繰り返すので,ドリルとしての学習効果も見逃せません。中間試験では,「赤点を取る生徒がいなくなる」という結果がでました。マッキーノをやっているときは,普段テストの点が取れない生徒さんたちが一番はりきってやっているのです。それで知らず知らずのうちに覚えてしまったのでしょう。もちろん,テストには,マッキーノでやった言葉を問題に加えています。
 さて今度の期末試験の結果です。さらに信じられないような結果が出ました。マッキーノでやった問題は,ほとんど全員が正答です。いつも点数が悪い生徒さんたちも,すごくできてるのは驚きです。ドリルとしての効果は,確実にあがっているようです。

・勉強になる
たのしく覚えられる。
回を重ねるごとに,少しづつ頭に入る。楽に覚えられる。
ビンゴで勉強するので,とてもよく頭に入るところが良いと思います。
遊んで学べる。
何回もやるから,自然に頭の中に入って,覚えられる。
同じのを何回もやるので,覚えられる。
授業しながら,遊べる。


■ボクの変更点
 このガリ本は,「マッキーノ」の具体的な運営方法がマンガでしかかかれていないので理解に苦しむところもありました。ですから,勘違いしているところもあるかも知れませんが,思い付いたことを書いてみます。

・問題用紙の配付
 ガリ本を読むと,最初の一回しか問題用紙を配らないようですが,うちの高校生は「ものを保存しない能力」が高いので無理です。ですから,毎回問題用紙をもっていって,「問題用紙ない人は,取りに来てください。」といっています。「なんで毎回配らないのか」という抗議には,「地球に優しい」というのが流行なので,「地球に優しくしました」といっています。毎時間決まった生徒さんが数人,問題用紙を取りに来ます。

・「フラッシュカード」をやめた
 ガリ本では,表に問題,裏に解答を書いた大きなカード(「フラッシュカード」と名付けている)を作って,それをシャッフルして問題を読み上げています。でもボクは,そういうカードをいちいち作るのはめんどうなので,やめました。「おみくじ」で番号を選び,問題を読み上げれば,それで十分だと思います。なぜそういうカードを使うようにしたのかが書かれていませんので疑問でした。
 これについては,牧野さんからお返事をいただいています。

「なぜフラッシュカードを使うのか」というと,カードを見せるときに補足(定義の覚え方など)する授業をするためです。ボクは6クラス受け持っているので,同じ用語を何回も使うことになり,フラッシュカードを作る気になるのです。
小学校のように一クラスだと,やはりおみくじを使っている人もいます。

(11/14付け私信より)

 牧野さんは,かなりの「教育的配慮」をしているようですが,ボクはもっと簡単にたのしみたいです。やっぱりカードを作るのはめんどくさいなぁ。また「おみくじ」の利点として,クセがかなりある(不揃いの割箸を使っている)ので出方に偏りがあるのです。そこで,「出目の予想」が可能になり,生徒さんたちは,毎回出目の記録をつけて「予想屋」としてもたのしんでいます。

・問題予想のたのしさ。
同じ問題が出るから,予想できてたのしい。

◎賞の設定
 たとえば,同時に2人の生徒があがった場合は,どうするのでしょうか。これについても書かれていないのですが,ボクは同時に上がった場合はふたりとも「早上がり賞」にしています。最多列賞なども同じです。(牧野さんもそうしているそうです。)
 また,〈マッキーノ〉では「部門賞」だけなのですが,ボクは「総得点」でも評価することにしています。その方が盛り上がるようです。そのため「究極早上がり」(「スーパー早上がり」と言っています)を10点に,「究極最多列」(「パーフェクト」と言っています)は30点として評価しています。
 これは「自分の点数がどれぐらいかというのがすぐに分かるように」と「ゲームをおもしろく」という配慮だったのですが,なかなか好評です。

◎リーチを要求
 〈マッキーノ〉では,上がったときに「マッキーノ」と叫ぶだけのようです。でも,ボクは「リーチをかけないで上がった場合は無効」としています。これで,後から「俺も上がっていた」などのクレームが減らせますし,他人の進行状況もわかるので,とてもたのしめます。

◎一時間に2回やってもよい
 ガリ本には「一時間に一度と決めている」とありますが,ボクは,生徒さんたちが希望するときは,一時間に2回やっています。だからといって,飽きてくるとかはありません。ポイントは,生徒さんたちが本当に希望しているかどうかでしょう。最近は要求に押されて,3回やってしまうこともあります。授業が全く進みません。でも,教科書授業だからいいんだもん。 生徒さんたちものっていますが,今は,ボク自身がたのしくてしようがありません。もうやりたくてたまらない。授業がない日は,本当に寂しい。もう中毒だわ。
 でも何回もやっていると,なぜかそのうちに「一日一回」に落ちつきました。不思議です。「ビンゴは一日一度だからいいのよ」なんていう生徒さんもいます。


■生徒さんたちが指摘した問題点

問題点
 答えしか覚えていない。テストの時が不安。
 先生は,あまり良くないと思っているのでは?
 ポイントが取れない。
 問題用紙の答えの欄は空白の方が良い。
 同じ問題ばかりなので,少し飽きて来た。
 賞品がもらいずらくなった。
 本当に賞品があるのか心配。


 でもみんな評価はいいのです。これぐらいの問題ならいいか。この問題点についても,牧野さんは研究されています。

 「答えしか覚えていない」というのは,まさにその通りです。それで今は,「定義の部分の読みとり方」を研究中です。キーワードを取り出して,連想ゲームのように覚える方法です。

 またたのしそうなドリルになりそうでたのしみです。またそう思う一方で「マッキーノはもう大部分が完成されている。90%を95%にする無駄な努力にならなければいいな」とも少し思っています。
 今の〈マッキーノ〉は,十分に「ドリル」として多くの教師に通用するものです。だから多くの人がまねできるものです。「特別に能力や勇気がある人しかできない」となったら嫌だなぁとちょっと杞憂?


■賞の確率
 20回ぐらいマッキーノをやったとき,賞の確率が気になりました。
というのは「究極早上がり賞」は20回やって2回出ているのですが,「究極最多列賞」がでていなかったからです。すでにのべ2000人以上がやった計算になるのにです。そこで確率を計算してみました。計算には自信がないのですが(一番の苦手が数学)・・。(間違っていたら,ぜひ指摘を!)


・究極最多列賞
 22個の碁石のうち6個が黒で,白い碁石ばかり16個取る確率と同じだと思うので
 16/22×15/21×14/20・・・・1/9。
 計算すると約1/7,5000。これでは,まず無理です。
 「16マスのうち15マス以上が埋まればよい」としても約1/8000。

・究極早上がり賞
 22個から4個を取る確率で,10列分あるので,
 4/22×3/21×2/20×1/19×10=約1/730
 一日に100枚ぐらいビンゴ用紙を配るので,7日で1回ぐらい出る計算になります。これは,確率通りにいっているようです。


*1 仮説ネットHP
  パソコン通信上での仮説の情報交換の実験のために開設されたネット。1993年の4月から期限を決めて運営されていた。代表は,丸山秀一(HFH01613)。

*2 授業に参加する
  高校教師の業界用語。生徒が授業中,内職や脱走や漫画を読んだりおしゃべりに夢中になったり,トランプしたり睡眠したりしないで,フツーに授業を受けている状態を差す。この参加の割合を「視聴率」といったりもする。



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