■高圧線研究

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◎高圧線探検隊報告

 電磁場測定器を購入して以来,高圧線や変電所での電場や磁場の強度を測定したいと思っていました。また,電磁波が体に及ぼす影響について書かれている本などから,〈高圧線の近くでは蛍光管が光るところがある〉ということも知っていました。しかし,なかなか行動に移せないでいました。やはりひとりよりも仲間でわいわいやったほうがたのしいと思ったからです。
 そんなとき,佐藤重範さんの「ピカチュー山で蛍検電ドライバーが光った」(『たのしい授業』98年10月号)という記事が目に留まりました。佐藤さんたちは蛍光管をつけることはできなかったようですので,「深夜ならどうだろう。また変電所の近くではうまくいくのでは」と思ったのです。
 そしてやってきたのが1998/10/10〜11の「竹内三郎さんと一緒に仮説実験授業をじっくり語る会」でした。ネビュラボールを使った実験をお見せするため,ボクの荷物には電磁場測定器やら検電ドライバーやら蛍光管やらがたくさん入っていました。その会場に向かう途中に,ボクは変電所を発見したのです。
 その会のナイターでネビュラボールの実験を披露した後,「これから変電所に検電器やらをもっていってみたいと思います。」と宣言しました。その探検隊に志願してくれたのは,宗像利忠さん,小笠原智さん,古山園美さんとぼくの4名。一行は深夜怪しくも手に蛍光管やらを持って数キロ離れた変電所に向かったのでありました。

 変電所は国道沿いにありました。そのため深夜にも関わらず街路灯などの光でかなり明るい状態でした。まわりは住宅地です。車を降りて,みなさんさっそく変電所に群がりました。変電所は高さ3mほどの有刺鉄線付きの金網で覆われていて,その中に入ることはできませんでしたので,まわりを一周しました。
 ボクは最初計測器を電場測定にしていたのですが,ほとんど反応がありません。強い電場がないため蛍検電器も蛍光管も光りません。不思議に思いながらも,磁場測定に切り替えて,大きな値がでる場所を探しました。「ここが値が大きい! ここなら光るかも!」ボクがそう叫んだ場所の測定値は約30mGでした。「光った!」蛍検電ドライバーが見事に光りました。しかし蛍光管は光っている様子がありません。そしてその場所は,高圧線のちょうど真下だったのです。
 どうも変電所よりも高圧線の電場のほうが強いようなのです。変電所の周りに張り巡らされている金網が電場を遮断しているように思えました。そこで我々は,住宅街の中の高圧線やその鉄塔の近くで実験してみることにしました。
 その結果,やはり高圧線(頭上εm)の真下で蛍検電ドライバーが見事に光りました。あまり明るくはありませんが,ふつうの検電ドライバーの中のネオンランプも光っています。ただ持っていたネオンランプ自体は,全く光っている様子がありませんでした。電場強度を測定すると最大で約10kV/mという値が得られました。この値は高圧線から遠ざかるほど小さくなりますし,鉄塔のすぐ近くでも小さな値となります。
 この電場強度の値を測定できて,蛍光管がつかないことが予想されました。ネビュラボールのすぐ近くでは蛍光管がつきますが,そこの電場強度は100kV/m(メーターのフルスケール)を越えるものだからです。(どれぐらいの電場で蛍検電ドライバーがつくのか調べてみたくなりました。)しかし,高圧線にもっと近づくことができれば,蛍光管を点灯させることも可能かもしれません。そういった場所を探してみたくなりました。また,変電所や高圧線に大変興味を持ちました。

 無線愛好家には,無線機の出力が大きいことを示すのに,近くに蛍光管をおいて光らせるということをやっている人も多いようです。

 

◎高圧線研究

 電磁波についての本でイラストが大変わかりやすい本を見つけました。この本は送電の仕組みについても詳しく書いてあるので,とても勉強になりました。この本で学んだことを書いてみます。

 天笠啓介・文,勝又進・絵『FOR BEGINNERS SCIENCE 1 電磁波』現代書館,1997.2

 高圧線は電圧によって種類があるようです。電圧が高いものから,100万V,50万V,27.5万V,15.4万Vなどとなっているようです。電圧によって送電鉄塔の高さも異なり,それぞれ110m,80m,60m,45mです。鉄塔の形状も電圧によって異なります。どうも,我々が探検した高圧線は15万V以下のものらしいです。もっと高電圧の高圧線を選べば,蛍光管を点灯させることができるのかもしれません。
 電気は発電所から変電所を通って27.5万〜100万Vの高電圧にされます。これは高電圧にしたほうが,途中でのロスが少ないためです。それがいくつかの変電所を経由して最終的に家庭用では100Vに下げられるわけです。我々が探検した変電所は「配電用変電所」といわれるものらしく,2.2万Vを電信柱用に6000Vぐらいに下げているところみたいです。

◎電場100kV/mの送電線を発見。 これなら蛍光管がつきそう

 電場の強さは電圧によりますので,高圧線の下で蛍光灯をつけるには高電圧の流れている送電線を探す必要があります。日本では「高圧線真下の電場強度は3kV/m以下」と規定されているので,高電圧を送電している鉄塔ほど高く建てられることになります。また絶縁碍子をたくさんつかっていたりして,見ただけでおおよその電圧がわかります。高電圧の送電線を見つけても,高さがあるので地上での電場強度はあまりかわらないはずなので,送電線が低く降りてきているところ,つまり変電所のあたりが可能性が高いわけです。
 地図でとなりの市(室蘭市)に,おおきな変電所があるのを見つけたボクは,さらに隣の市(伊達市)にある火力発電所からの送電を受けているところと判断して,そこにいってみることにしました。変電所には高圧線が集まっているので,その場所は高圧線を見ればすぐにわかりました。変電所はちょっと小高いところにあり,何本もの送電線がそこに集まってきていました。その鉄塔の形といい,絶縁碍子といいまさに高電圧送電用のものです。ボクはうれしくなりました。送電線のルートの下はテニスコートや空き地になっており,自由に調べることが出来ました。変電所は金網で囲われているため,変電所に近づくと電場強度は下がりますが,磁場は30mG。しかも変電所のあたりには「ジーン」といったノイズとオゾン臭が立ちこめていました。「これはいける」と確信したのと同時に,まわりは住宅街なので「こんなところに住んでいて何か影響はないのかな」とも思いました。測定器を持って送電線の下を歩き回り,ついに電場強度が100kV/mにせまるような値が出るところを見つけました。ここなら蛍光管もつきそうです。ただこのときは,昼間でしたので,蛍検電ドライバーの点灯もよくわからない状況でしたので,夜でなければ蛍光管の点灯は確認できないと思い,夜を待つことにしたのです。

 いよいよ夜になって現場に到着したのが夜8時過ぎ。しかし現場を見て唖然としました。近くにあるガソリンスタンドの照明でとても明るいのです。こりゃスタンドが休みの時か,スタンドが閉まってから来るしかないという感じでした。しかし蛍検電ドライバーはあちこちで明るく光り,ネオンランプもかすかに光っているのがわかりました。グローランプは光っているのが確認できませんでした。そして肝心の蛍光管ですが,光っているような感じがするのですが,なにせまわりが明るくてどうもはっきりしません。これはもう一度来るしかなさそうです。乞うご期待。(11/1)

 「長い蛍光管のほうが電圧差が大きく出て光りやすいのではないか」と考え1mぐらいの蛍光管を持って再度変電所に向かいました。スタンドに電話をかけ,閉店時間からかなりたった頃に現場に到着しました。ちょうど出張で来ていた札幌の池田毅司さんを臨時隊員に迎えての挑戦です。
 現場に着くなり,蛍光管がぼんやりと発光しているのがわかりました。手で持っているところまでが光るのはネビュラボールのときと同じです。そして,一番電場の強いポイントでは,蛍光管全体を発光させることに成功しました。「まるでスターウォーズみたいだ」と池田隊員も感激です。蛍光管は,写真のように高圧線に向けてちょっと斜めに倒したぐらいが一番よく光りました。また環状の蛍光管も持っていったのですが,これはかすかにしか光りませんでした。やはり長い蛍光管のほうがいいようです。
 蛍光管を持ってあちこち歩き回ったりしてみましたが,やはり蛍光管が光るところは電場強度のメーターの値の強いところと一致していました。
 調子に乗った探検隊は,「ついでに放送アンテナも調べてみよう」と放送アンテナが林立する測量山の山頂に向かったのでありました。(11/18)

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