■電磁場研究

メールで反応をどうぞ。伝言板に反応をどうぞ。



もくじ

電車での電磁場  放送アンテナの電磁場  NEW!身のまわりの電場

電磁場研究のための基礎文献

電子レンジ・パソコン・携帯電話・PHSのマイクロ波

簡便磁場測定器の妥当性・ボクの電磁場研究のスタンス



電車での電磁場

 以前から電車の電場や磁場が気になっていましたが,自動車を使う生活のためなかなか測定できないでいましたが「小樽たのしい授業サークル」へ参加することにして電磁場測定器を持って電車に乗り込むことにしました。
 北海道の電車は交流電車で架線の電圧は2万ボルトですから高圧線と比べると電圧が低いものです。電磁場の強さは距離の2乗に反比例しますから,ホームの線路よりの端で測定することにしました。
 そこでの磁場は100mG以上ありました(メーターのフルスケールが100mG)。これは大型テレビの近くと同じ強さです。電場強度は6〜7kV/mでたいしたことなく,これでは蛍検電ドライバーも点灯しません。ちょっとがっかり。
 電車に乗り込んでからは,ずっと測定値の数値を読んでいました。まず電車は金属製ですので,内部に電場が入り込むことはできませんから,電場の測定値はゼロです。《電子レンジと電磁波》での実験で,金網やアルミホイルで覆うようなものです。磁場はほとんどのものを貫通しますので,電車内部でも測定できます。走行中の磁場は100mGを越えています。しかしその測定値がよく変化するのです。いろいろ予想しながら測定値を眺めているとおもしろいことに気がつきました。
 それはまず,電車が加速すると測定値が上昇し100mGを越えますが,惰性で走っているときには1mGと100分の1以下になってしまうことです。どうもこの磁場は電車のモーターが発生しているもののようです。さらにおもしろいのは,ブレーキがかかったときです。ブレーキがかかると,磁場が急に強くなるのです。「ブレーキの仕組みに磁場を発生するようなものがあるのだろうなぁ」と思いました。
 電車が停車中もメーターの測定値は変化し続けます。1mGぐらいだったのか急に20mG前後になるときがあります。ボクはこれを「ブレーキを動作させたのでは」と考えました。

 「小樽たのしい授業サークル」でこのことを報告すると,たまたま参加されていた城雄二さんが「電車は減速するときに発電しているのではないか」とおっしゃっていて,なるほどと思いました。

 松澤正二ほか監修 『学研の図鑑 鉄道・自動車』 学習研究社
 丸山弘志 『鉄道の科学』 ブルーバックス 講談社

以上の本で調べてみると,やはり電車は自動車のエンジンブレーキのように,減速時には車輪でモーターを回して発電しているとのことです。それで磁場が発生しているわけです。

 ホームでの磁場測定の値はちょっと大きすぎると思いますので,また調べて見るつもりです。(99/1/18)




放送アンテナ

 放送局はアンテナは強い電磁波を出しているはずです。放送アンテナの近くでは,強い電磁波によって検電ドライバーが光ったりすることがあるのでしょうか。
 各局の放送アンテナが林立する室蘭市の測量山に行って来ました。頂上近くまでくるまでいけますので,らくちんです。ただ当日はうっすらと雪が積もっていて,とても寒かったです。ここの放送アンテナは,それぞれがいろんな色の光でライトアップされていて,まるでおとぎの国にいるようなたのしさです。
 駐車場はNHKの施設の裏にあります。車から降りて電磁波を測定すると,電場はまったく測定できません。アンテナの近くへ行ってみてもだめです。これは測定器の対応周波数が100kHzまでなので無理からぬことなのでしょう。テレビの電波はメガヘルツ帯でほとんどマイクロ波です。(このときはマイクロ波を測定するのを忘れていた。)蛍検電ドライバーも,蛍光管もまったくつきません。
 測定器を磁場測定に切り替えてみて,驚きました。メーターのフルスケール100mGを振り切っています。しかも,測定値が不安定で変動しています。かなり強い変動磁場があるのです。磁場についても低周波のものしか測定できないはずですので,放送電波そのものの磁場成分ではなく,放送設備に関わって発生する磁場だと思われます。(磁場が強い場所を探せばよかったなぁ。)
 あまりの寒さにすぐ引き返してきましたが,「放送電波が出ている」ということをたしかめる簡単な実験を考えて,再度行きたいと思います。(98/11/19)

 


電場もたのしい 身のまわりの電場

 高圧線で蛍検電ドライバーを光らせてから(【高圧線探検隊】参照),電場に興味を持つようになりました。それは「TRIFIELDMETER」(【もの】ページ参照)という電場強度を測定できる測定器を入手して定量的に測れることができるようになったことにもよります。今までボクが持っていた電磁場測定器はすべて磁場の測定用で電場が測定できるものは初めてだったのです。家庭電気製品について磁場の強さ(磁束密度)は,たいていのものを測定しましたので,今度は電場の強さを測定してみようと思いました。
 手始めに,ノートパソコンに測定器を近づけると,液晶画面の端のほうで80kV/m程度の電場が測定されました。「これぐらい強い電場なら蛍検電ドライバーも光るのではないか」と思えました。なぜならネビュラボールでも蛍検電ドライバーは光りますが,その電場強度は100kV/m以上だからです。そこで蛍検電ドライバーを近づけてみると,見事に光るではありませんか。「これはおもしろい」といろんなものについて調べたくなりました。
 イオン式の空気清浄機は高電圧で空気中のゴミなどをイオン化して集めているため,強い電場を発生させています。蛍検電ドライバーもよくつきました。
 ACアダプターは,強い磁場を発生させているのですが,電場は測定できませんでした。

 改めてネビュラボールで蛍検電ドライバーが光るときの電場強度を調べてみたところ,およそ10〜20kV/m以上で蛍検電ドライバーが点灯するように思えました。この数値は家電製品などを測定したときも同じでした。電場強度が10〜20kV/m以上であれば蛍検電ドライバーは点灯しました。

 28型のテレビで調べてみると,ブラウン管の表面で電場強度20kV/mで蛍検電ドライバーは点灯。15型のテレビでは,電場強度がやや小さいように思えました。

 蛍光灯では,点灯時に間近で10kV/m程度。ようやく蛍検電ドライバーが点く程度。

 おもしろいのは,モーターを使った電気製品です。換気扇,電気ひげ剃り,掃除機,これらはかなり大きい磁場を発生させますが,電場は測定できませんでした。これは,モーターが金属に覆われているためか。はたまたモーターは一般に電場を発生させないものなのか?ACアダプターも強力な磁場を作るのに,電場はさっぱり・・・。ラジオからも測定できませんでした。

 電子レンジで調べてみると,動作中の窓のところでかすかに電場が測定できますが,蛍検電ドライバーは点灯しません。

 おもしろいのは,冷蔵庫です。これがけっこうな電場を作っているのです。ドアのところで10kV/m,側面で20kV/m程度ですから,蛍検電ドライバーが見事に点きます。

 サイエンスシアターの「シアター式エレキテル」を使っているときに,ふと「蛍検電ドライバーが点灯するのでは」と思い,やってみたら見事に点灯しました。ただし,空間では点灯せず,蛍検電ドライバーの先をエレキテルに接触させないとだめです。また,蛍検電ドライバーが光っているときに,エレキテルに触れると,ランプが消えるので放電したのかと思って,手を離すとまた点灯します。これはちよっと不思議。
 蛍検電ドライバーは静電場にも反応して点灯するようです。これはおもしろいです。(99/2/11追記)



◎電磁場研究のための基礎文献

 電磁場や電磁波について学ぼうとして本を探すと,多くの専門書が数式ばかりでちんぷんかんぷんなことばかりなのがわかります。

・『電磁気学のABCやさしい回路から「場」の考え方まで』ブルーバックスB728,福島肇,講談社,88.5

 たとえば,ふつうの専門書で「磁束」のところを読むと数式ばかりで全く意味不明なことが書いてありますが(読んでみてください),この本では「磁力線の束と思えばわかりやすい」と明解です。詳細は【おすすめの本】で。

・『サイエンス・シアター シナリオ集 電磁波をさぐる』板倉聖宣編著,板倉研究室,95.4

 電場や磁場の説明が実に明解です。電磁波について一番わかりやすい本です。ただ残念なのは,ほかの専門書で使われるような専門用語をほとんど使っていないので,この本を読んで「少し電磁波がわかってきたかな」と思ってほかの本を読んでも,よくわからないことです。
 電磁波のことを学ぶには,まずこの本を読みながら自分でも実際に実験してみることをおすすめします。このシナリオ集を元に,授業プラン化を考えていて試案を作成,札幌仮説サークルで発表しました。

・『まんがアトム博士の電磁気学入門』大塚明郎監修,東陽出版,90.12

 マンガなので,ちょっと読みにくいですが,原子論的な説明がなんといってもいいです。ただ残念なことに,電磁波については続巻ということで,途中でおわっているのです。『続・電磁気学入門』の発行の予定があるそうですのでたのしみにしています。

・天笠啓介・文,勝又進・絵『FOR BEGINNERS SCIENCE 1 電磁波』現代書館,1997.2

 電磁場の体への影響がテーマの本のようですが,磁場や電場のイラストが大変わかりやすくオススメです。電磁波はこの本のようなイラストで表現するとよいと思います。

 


◎電子レンジの漏洩マイクロ波

 「Trifiled meter」(【もの】ページ参照)はマイクロ波(50MHz〜3GHz)の電力密度を計測できる機能が付いています。早速動作中の電子レンジ(韓国製)に近づけてみると,ε0cm以内で1mW/cm2以上(測定器のフルスケールをオーバー)が計測されました。特に正面の網になっている窓の部分から漏れだしている量が多いようです。〈電波法施行規則第46条の7電気用品取締法技術基準別表第八電子レンジの項〉によると「器体の表面から5p離れたあらゆる場所において測定した漏洩電磁波の電力密度は,最悪条件でも5mW/cm2以下」とありますので,この基準にもしかしたら達していない可能性もあると思われます。

◎携帯電話のマイクロ波

 携帯電話もマイクロ波(800MHzと1.5GHz)を使っています。使用中の携帯電話からは200mG近い磁場が計測されます。それではマイクロ波の電力密度はどうかというと,電子レンジと同じく1mW/cm2以上でした。携帯電話は頭部に密着させて使用しますので,電力密度としては動作中の電子レンジに頭部を密着させているのと同じことになります。

◎PHSのマイクロ波

 それならPHSではどうでしょうか。PHSは1.9GHzという電子レンジの2.5GHzに近いマイクロ波を使っています。ただ使用中のPHSでの磁場は1mG以下で,携帯電話の200分の1でしかありません。これは携帯電話と比べて無線出力がとても小さいからです。PHSの無線出力は10mWで携帯電話の60分の1程度。
 測定してみると,電力密度は0.05mW/cm2程度しかありませんでした。北海道室蘭市の病院では,院内の連絡用にPHSが使われています。これも,PHSの電波では病院の機器などに影響を与えないという判断からなのでしょう。

◎パソコンのマイクロ波

 最近のパソコンはCPUに高速なものが使われてきて450MHzなんてのもあります。これが電波として放射されていたらマイクロ波帯です。そこでパソコンかせマイクロ波が出ているかどうかを計測してみました。
 ボクの所持するパソコンは150MHzです。結果は,マイクロ波は全く測定できませんでした。電波を放射するようには作られていないのでもっともなことですが。

 

 


簡便磁場測定器「ドクター・ガウス」の妥当性 ボクの電磁場研究のスタンス

 電磁場の測定器として売られている「ドクター・ガウス」(【もの】ページ参照)は,その名の通りガウス・メーター(磁場測定器)である。10mG(ミリガウス)までの磁場強度(正確には磁束密度)を測定できるが,これで電磁場の強さを測定したと言えるのであろうか。

◆引用文献◆ *1 徳丸仁『電波は危なくないか心配される人体への影響』講談社ブルーバックスB773

・電波の強弱
 高周波電波のエネルギー量は電場(電荷に対して力を及ぼす空間)と磁場(運動する電荷に対して力を及ぼす空間)をひとまとめにして〈空間を直進するエネルギー流〉というイメージでとらえることができ,〈単位面積あたりに運ばれる電力=電力密度=磁場強度×電場強度〉で表される。単位はW/m2(ワット/平方メートル)。
 無線周波数帯以下の低周波の場合は,電波が伝わってくるというよりは〈電波の中にいる〉というイメージとなり,磁場と電場それぞれが別々に生体に作用すると考える。電場は電場強度(電荷に働く力の大きさ)としてV/m(ボルト/メートル),磁場は磁場強度(1Wbの磁束に働く力の大きさ)としてA/m(アンペア/メートル)の単位を使う。磁場では磁束密度(単位面積あたりの磁束数=磁場強度×透磁率)のT(テスラ)を使うことが多い。(*1 181〜182ぺより丸山が補足してまとめた)

・ガウス
 テスラは磁力の強さ(磁束密度)を表す単位であるが,とても大きな単位なので,一般的にはガウス(G)を使う。1T=1,0000Gである。ガウスでも大きいため,ミリガウス(mG)がよく使われる。1mG=0.001G=10μTである。

・低周波電磁場とその遮蔽

 低周波では電場と磁場が独立して存在し,電波のように空間に放射されることはない。高周波のように空間に光の速度で放射される電波であれば,電場か磁場のどちらかを遮ることで電波自体を遮蔽できる。たとえば,携帯電話のマイクロ波を遮蔽するには,アルミホイルで覆えばよい(もちろん携帯電話は使えなくなる)。しかし,低周波の場合は,電場と磁場は独立して存在するので,電場と磁場の両方を遮らなければ遮蔽したことにならない。電場は金属等で比較的簡単に遮蔽可能であるが,磁場の遮蔽は大変難しい。低周波電磁場の発生源(たとえばACアダプタ)をアルミホイル等で覆っても,磁場成分は全く遮ることはできない。

・電磁波の安全性

 高周波の電磁波はX線や紫外線など生命にとって危険なのは,よく知られていることである。またマイクロ波帯の電磁波も熱効果のため注意する必要がある。そしていま問題になっているのは,家庭用に使われている50Hz・60Hzの低周波のものである。ただし現段階では,「危険である」とも「安全である」ともいえない。

・低周波電磁場の安全性

 もし低周波電磁場が生物に悪影響をもたらすといると,その原因は磁場成分にあると思われる。なぜなら,電磁波は周波数に比例してエネルギーが増大し,また人体への吸収率も上昇する。よって低周波の電場はほとんど問題にならないし,もし問題になったとしても,遮蔽は容易である。低周波磁場が生物に及ぼす影響については,まだ明らかではないが,問題があると判明した場合,遮蔽が困難であるのが大きな問題となろう。

・市販の電磁波防護製品

 携帯電話を扱っている店では,たいてい携帯電話に並べて「電磁波からの防護」を謳った製品も販売しているようである。それらの製品は,シール状やボタン状のものが多く,携帯電話自体に張り付けて使うようになっている。これらの製品の効果は,かなり怪しげである。まず「どういう理屈で防護しているか」ということが明らかにされていないものが多く,明らかにされていても超能力的な説明である。
 たとえば携帯電話からのマイクロ波を遮蔽すると電話自体が使えなくなるので,「電磁波を遮蔽するのではなく,有害電磁波を中和する」という説明をしている。しかし「電磁波を中和する」とはどういう意味なのであろうか。そして何よりも,「低周波の防護は困難」ということを忘れてはいけない。実際にこういった製品を使用しても,低周波磁場を遮断することはできないのである。
 しかしながら,こういった製品でも暗示効果を発揮できるので,使い道がないともいえない。

・電磁波測定の問題点

 電磁波は球状に放射されるので,測定器の向きなどが測定値に影響する。また低周波の場合は,磁場と電波が独立して存在するので,何を持って電磁波というかは難しい。しかし「ドクター・ガウス」のような測定器でも,電磁波の強さのおおまかな違いはつかめるだろう。特に感覚ではとらえることのできない電磁波を音とメーターの指針で示してくれることはたのしいことである。

・結論

 以上のように,「ドクター・ガウス」は低周波磁場を測定するものであるが,そのメーターが「安全,危険」と色分けされていることに科学的根拠はない。しかし電磁波防護を謳った製品の科学的根拠のなさを示すことはできる。特に感覚ではとらえることのできない電磁波を音とメーターの指針で示してくれることはたのしいことである。筆者は,4種類の電磁波測定器を所有しているが,そのなかで測定していて一番たのしいのが,この「ドクター・ガウス」である。

 


 

以下追記していきます。

 

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