■特設ページ

《社会と人間を動かす力学》 

《力と運動の原理》


2007.10.31 自由落下する物体の速度
2006.12.13 ジャイロリングの紹介
2003.8.6 力積の実験 まで加筆。



■はじめに
 これは授業書といえるかどうか分かりませんが,板倉聖宣先生の和光大学での講義記録(舘光一編『和光大学講義録1 社会と人間を動かす力学』)に授業書と思えるもの載っていますので,それをもとにボクが再構成したものです。授業では〈社会と人間を動かす力学〉という授業書名にして「第1部 吹き矢の力学」としています。高校生のみなさんはけっこう理屈っぽい授業書が好きですので,これはいいと思ったのです。生徒さんたちにも,とても好評です。

・授業プラン化
 岡山の佐藤重範さんがこの〈社会と人間を動かす力学〉を授業プラン化されています。イラストなども豊富で,たいへんうまくまとまっていると思います。これからは佐藤さんを中心にこの研究を進めていったらよいと確信いたしました。関心のある方は,佐藤さんまで。(98/12/7)


・授業書化

 検討を経て,『仮説実験授業研究』に掲載される予定です。佐藤さんが情報を求めています。(2003.7.3)



■ガイド

 実際の授業書は完成版がまだ公開されていないため,ここで紹介しているのは,実際の授業書と構成が違っています。丸山がやっている授業を紹介しています。


◎「ひとによって吹き矢力は違うか」

・ストローの長さ
 市販の20cmぐらいの長さのストローを使うと,1本のときでも吹き矢力のある生徒さんはマッチ棒を教室の後ろまで飛ばしてしまいます。それで長さ10cmぐらいのミニストローを使いました。給食に出る牛乳のストローが,ちょうどこの長さなので違和感もありません。ミニストローを使うと実験結果がシャープに出ます。

 またストローは二三回使うと内部がしめって滑りが悪くなりますので,新しいものと取り替えます。


・マッチの大きさ

 マッチは頭薬の大きさがそれぞれ異なっていますので,ストローにぴったりのものを選びます。


 ミニストローで生徒さん全員に3回ずつやってもらって,吹き矢力の違いは3倍(2〜6m)ぐらいになりました。「ひとによって出せる〈力〉は異なる。じゃ,力のない人はどうやったら勝つことができるの」というようにして導入とします。

 この問題は初めは「人によって吹き矢力はそんなに変わらない」という意図があったのですが,実際に合いませんし,流れを考えても,このように変えた方がいいです。


◎「マッチの入れる位置」

 ここからは吹き矢力No.1の生徒さんにやってもらいます。NO.1の彼女でもマッチを入れる位置を間違えると,吹き矢力最低のひとと変わらない結果となります。

 「吹き矢力のある人でもやり方(技術)を知らないと全然ダメなわけだ」ということです。


◎「ストロー2本では」

 ストローをつなぐときは,セロテープで隙間がないように注意します。

 この実験は「一番吹き矢力のない人」にやってもらうと効果的です。吹き矢力No.1の人のストロー1本のときの距離と同じになることでしょう。ただ吹き矢力のない人には「マッチが飛び出すまで息を吹き続ける」というのができない人がいるので,そういう人ではストローが長くてもマッチは飛びません。そういうときは違う人に実験してもらいます。

「吹き矢力のない人でも,技術で吹き矢力のある人に勝てる」というわけです。

◎「ストロー4,8本では」

 これからの実験は吹き矢力のある人にやってもらいます。もうマッチは教室の後ろまで飛んでいってしまいます。ガラスに当たるときの音などで判断します。


◎「教訓 時間をかけろ」

 「たとえば彼氏をゲットするのに美人力を増やすのは難しいとしても,時間ならいくらでもかけることができる」「動かしいたいときは,時間をかけろ」

 球技でボールを遠くに飛ばすためには,ボールに力を加える時間を長くすることが大切です。大リーグの野茂投手はトルネード投法といって,竜巻のように体をひねって,ボールを長く押し続けるので速い球を投げることができます。テニスやサッカーなどもボールに対して力を長く加えることによって,遠くまで飛ぶようにさせています。ボーリングも高い位置から投げ降ろすことにより,より力を加えているというわけです。
 またスポーツにおける「フォロースロー」も同様な原理に基づいています。投げ終えた後の動作まで意識することによって,連続的な力を加え続けることができるのです。だから吹き矢においても「矢が飛び出しても吹き続ける」というのが極意なのかも知れません。


◎紙トンボ

 いままでのまとめとして紙トンボ(10センチのタイルトンボ)を作ります。コツは「時間をかけること」です。最初は生徒さんたちは,みんな上手に飛ばすことができません。「瞬間の力」を大きくしようとしているからなのです。「勉強したじゃない。継続時間が大事だよ。」とアドバイスしてゆくと,すぐにみなさん上達するのでありました。紙トンボはなぜかうまく飛ばないものもできる(ホイールバランス?)ので,うまく飛んだものに名前を書いて保管しておきます。後で運動量を終えてから,紙トンボの先端に5センチのタイルをつけて,その効果を実感しようと言うわけです。

 紙と竹串との固定には,瞬間接着剤が良いみたいです。ホットメルトボンドではあまりうまくいきません。


◎力積の実験  「動かしたくないとき」

 「男友達の中から彼氏だけ引き抜きたいとき」「結婚に親が反対しているとき」そんなときは,関わりたくない相手には時間をかけないことが大切です。時間をかけるとめんどうなことまで一緒に動いてしまいます。


・切れるのはどちら?
 『シナリオ集』にも出ている,「おもりの上と下の糸のどちらが切れるか」という実験もたのしいものです。「おもり」に「穴開けパンチ」,糸のかわりに紙テープを使いました。原理を力積で説明すると,生徒のみなさん大納得ですぐに簡単にできるようになりました。(2001.6.21)

 思いついて,パンチのかわりにはさみをつかってみました。はさみには穴が二つあるのでやりやすいのです。そして「下のテープだけを切ってもらう。失敗するとはさみが落ちてくる」という設定にすると,ものすごい緊張感が・・・。くれぐれも事故のないようにやってください。(2002.8.26)

 この実験は,おもりが重いほど簡単です。だからうまくなってきたら,軽いおもりをつかってみてもいいでしょう。物理実験用のおもりが上下に引っかけるところがついていて便利です。


◎新聞紙とマッチ棒吹き矢

 新聞紙を的にしてマッチ棒吹き矢を吹きます。1本よりもストロー2本の時の方が,新聞紙は大きく動きます。それではストローを4本,8本とするともっと大きく動くようになるでしょうか。ストローが長くなるとマッチの速度が大きくなります。つまり瞬間的に新聞紙に当たることになります。すると新聞紙の当たったところだけが破けて,新聞紙の他の部分はほとんど動かなくなってしまいます。

・空手

 空手の達人と素人の違いは何でしょうか。なぜ空手の達人は素手でブロックなどを割ることができるのでしょうか。これは速度が違うからです。空手家は大きな速度で手をブロックにぶつけますから,ブロックはぶつかったところだけが壊れて,他の部分には力が伝わらないのです。それを素人がやると速度がないので,ブロック全体を相手にすることになるので,ブロックが割れないのです。


・釘打ち

 金槌で木材に釘を打つとき,釘をゆっくり叩いたのでは,力が釘だけでなく木材全体(ヘタすると地球全体!?)に伝わってしまって釘はほとんど木材に入っていくことはできません。速く叩くと,力は釘だけに伝わって,釘はささり込んでいくわけです。


・ケンカ

 ケンカでも同じことが言えますが,殴られる側から言うと,できるだけ時間をかけて殴られた方が被害が少ないことになります。

・テープはがし

 テープをはがすとき,急いではがすとノリが残ってしまうのも同じ理屈です。力が伝わるのには,時間が必要なのです。

・棒を叩き折る
 大道芸的な「グラスに渡した棒を叩き折る」なんてもよいと思います。「継続は力なり」を説明するのに,「どんなに力が大きくても継続時間が少しならだめ」という説明もなかなかいいと思うのですが。(2001.6.15)

 ワイングラスに水を入れて,棒を渡して,その棒を叩き折る実験をやってみました。生徒さんたちは,とてもやりたがっていましたが,ワイングラスに予備がなかったので,まず剣道三段の同僚にやってもらいました。見事に棒は折れ,ワイングラスは微動だにしません。中の水は少し揺れていました。しばらくの静寂のあと,拍手喝采。次に生徒さんにやってもらいました。ワイングラスが倒れて床に落ちて割れてしまいました。(2001.6.26)

 これのいい練習方法を考えました。ワイングラスの代わりにスチロールコップを使うのです。下手な人がやると,コップが粉々になります。これで何度か練習してもらってから,上手な女子にワイングラスでやってもらったら,見事成功。彼女は「いままでの授業で一番たのしかった」と興奮さめやらぬ様子。(2002.8.26)

 棒が多量に必要となりますので,100円ショップで4本100円のを買うと安くて良いです。


・腹上ブロック割り

 これまた大道芸の,「仰向けに横たわって腹の上にブロックを置き,それを大きなハンマーでたたき割ってもらう」という芸も,この力積の応用です。経過時間が短ければ,力は腹には伝わらないのです。しかし,この実験は危険ですので,実際にはやらないほうが良いでしょう。(2002.8.26)


◎力積の実験 邪魔者だけを動かす

*10円玉落とし

 ガラスコップ(ビーカーでも良い)の上に名刺を載せて,その上に10円玉を置きます。名刺を素早く動かせば,力は10円玉に伝わりませんので,そのままコップに落ちていい音がします(だからガラスコップがいい!)。これができたら,次はハガキでやってもらい,だんだん大きな紙を使ってもらって,最終的には画用紙でやってもらいます。(2003.7.2)

 これは全員ができるようになります。

*テーブルクロス引き

 テーブルクロス(布)の上にコップを並べます。勢いよくテーブルクロスを引くと,コップはそのままです。練習はマジックを何本か立ててやると良いです。

 これはできない生徒さんもいます。

 これを簡単に実験するには,タバコ状のものとアルミホイルを使ってできます。アルミホイルを2×10センチぐらいに切って,机の端から半分ほどを飛び出させておきます。机の上のアルミホイルの上にタバコ状のものを立てておきます。机からはみ出しているアルミホイルを手でたたき落とすと,アルミホイルだけが動いて,タバコ状のものは立っているままです。

*マジック落とし

 生徒さんには,マジックを垂直に2本重ねたものを用意して,下のマジックを抜いてもらいます。「経過時間」が少ないと,上のマジックには影響を及ぼさないので,そのまま落下して直立します。だるま落としと同じですが,こちらの方が簡単です。

おすすめのマジック

 この実験は本体が金属製のマジックでないと弾むためにうまくいきません。100円ショップで売っているシャチハタの「アートライン中細書き」がベストです。(2002.8.26)

 最近は,このマジックの本体が金属製からプラスチック製に変わってきています。プラスチック製のものはよくありません。 2007.10.31


*だるま落とし

 駄菓子屋などで一個100円ぐらいのだるま落としセットが売っています。また「ダルマ・ファイター」という,直径が30センチほどのダルマ落としも玩具屋にありました。これらでダルマ落としに挑戦してもらいます。

 これはかなり難しいです。

 プラスチック製のものを発見しました。木製のものよりもずっと簡単です。2007.10.31



・矢の作り方
 サイエンスシアターに出て,またサークルなどでほかのひとが吹き矢をするのを見ていたにもかかわらず,筒に1m20cmのパイプを使った吹き矢がうまく飛びません。『サイエンスシアター シナリオ集』をよくよく読んでみると,矢につける円錐形にした紙の長さはなんと20cmもあるではありませんか。ボクは「円錐形にすればいいんだ」とだけ思って,長さは3cmぐらいしかないものを使っていたのでした。長さ20cmのものを使ってみると,吹き矢の勢いがまるで違いました。                        (98/11/17)

・風船を的に
 第1部「吹き矢の力学」が終わったところで,教室の後ろにゴム風船を張り付けて,1.2mの吹き矢でねらってみました。破裂する風船と壁に突き刺さる矢はすごい迫力です。最初は下手だった生徒さんも何回かやると,すぐに上手にねらえるようになりました。「これでもう就職がなくても狩猟生活ができる」なんて冗談も。

 今年はクラスの人数が少なかったので,全員分の吹き矢を用意して,一斉に的をねらってもらいました。「ねらってー。発射!」というボクの号令で一斉に吹き矢が飛び出します。生徒さんたちは,とても気に入って何回も何回もやっていました。(2001.6.21)

・まとめに「紙トンボ」
 サイエンスシアターのシナリオ集『力と運動のなぞをとく』より,ここまでのまとめとして「紙トンボ」をやりました。
 さらにボクは思いついて「重さによって運動量が違ったよね」と紙トンボの両端にホッチキスの針を打ちました。これがまたとても効果的なのです。5ヶぐらいずつ打ち付けると,教室の後ろまで飛ぶようにもなります。
 みなさん力積と運動量を実感していただけたようです。                       (98/12/3)

 ホチキスのかわりに,板鉛を切ったものを使ってもいい結果が出ます。 2007.10.31




「ホンモノの吹き矢」

 ボルネオ島で使用されているホンモノの吹き矢を見てきました。そのレポートです。


・自由落下する物体の速度

 ビルマのデモを撮影していた日本人ジャーナリストが国軍の発砲により射殺されました。ビルマ政府は「空に向けて威嚇射撃していたものの流れ弾が当たった」としましたが,それはホントウでしょうか。

 拳銃の銃弾の初速はマッハ1ぐらいで,上空へ向けて撃った場合,1kmまで到達し,落ちてくるまでに37秒を要します。その落下速度は時速160キロです。拳銃の銃弾よりも重いライフルの銃弾では,初速はマッハ3,3キロ上空まで到達し,58秒後に落下。その速度はやはり時速160キロです。これらの銃弾は横向きに落ちてくるそうです。では,時速160キロの銃弾に殺傷力があるのかというと,皮膚も貫通できなく,ただ「痛い」と感じるだけです。

 終端速度は重さによって異なり,1セント貨では時速100キロ,パチンコ玉では時速130キロですが,人体では190キロとなります。

 米国では州によっては「上空へ向けて銃を発射してはならない」という法律があるそうです。 2007.10.31





・「押して引いて,また押して」振り子の話に生徒さんたち感動
 まさつのところからは,佐藤さん作成のプランを使わせていただきました。最後の「相手のリズムに合わせて,押したり引いたり」には生徒さんたちが感動。「もっとちゃんと勉強しておけば良かった」とか「今までのプリントを全部ちょうだい」とか大好評。というのもボクはここで昔札幌の講座で板倉聖宣先生がこのことを振り子にたとえて講演してくれた内容のことを話したからです。ボクもその講演には感動しましたから。その内容とは,「変化しようとすると,必ず揺り戻しがある。このときに,〈ああ,だめだった〉と思ってあきらめてはいけないし,戻ってきた振り子に対して,一所懸命抵抗するのもだめ。振り子は,またあちらに振れるのだから,そのときに力を加えれば,もっと大きく振れるようになる。社会とはそうやって変わってゆくものだ。」というような内容です。生徒さんたちは,このことを職場での人間関係や男女関係に置き換えて納得したようです。
 いやあ,最高の授業の終わり方でした。(98/12/11)


・最後は〈びゅんびゅんゴマ〉と〈皿回し〉 

 授業のまとめとして,まず『ものつくりハンドブック』より〈びゅんびゅんゴマ〉を作ってもらいました。「小さな力で時間をかける」「運動量の問題」「相手の動きに合わせる」ということがこの〈びゅんびゅんゴマ〉で実際に体験できます。コマが軽かったり,初めから勢いよく回そうとしたり,コマの動くタイミングに合わせて手を動かしてやらないと,うまく回らないのです。さすがに「子どもの頃遊んだ」という60才の生徒さんはとても上手。どうにもうまくできない生徒さんに「相手に合わすことができないのネー」といったら,「彼と別れたの」というご返事。しかし彼女は家で特訓していまやプロ級の腕前に。こんどの恋愛はうまくいくかもね。「授業の法則で彼女をゲットできた」という生徒さんは,初めまったくできなかったのが,瞬く間に上達しました。やはり基本(法則)を知っていると強いようです。

 〈皿回し〉(クリックすると皿の説明へ)も,〈びゅんびゅんコマ〉と原理は同じです。でもできたときの喜びは,こちらのほうがずっと大きいみたいです。教室中で皿が回っている様子は,ちょっと異様なものがありましたが,生徒さんたちの顔のたのしそうなことと言ったらありませんでした。「彼氏と別れた」という彼女は,最初「どうせできない」と拒んでいたのですが,ボクがちょっと強引にやらせてみたら,できたので大喜び。「これでもう相手にあわせられるね」と笑顔。
 皿はやはり運動量が効いてきて,重いほうが楽です。だから会得すれば,ホンモノの皿は重くてやりやすいのだろうなと想像できます。

 〈びゅんびゅんコマ〉は学校中に広がってしまって,今でも「後で取りに来るからつくっておいてね」といわれます。みなさんたのしめました。(99/1/26)


・「ジャイロリング」

 「相手に合わせて力を加える」の説明には「ジャイロリング」も良いかも知れません。できるようになったら,様々な技に挑戦することもできるので,たのしそうです。

 原理と技の説明はこちらで 

http://www.jugglingworld.biz/tricks/tricks_jitter-ring.html(英文)

 2006.12.13


・関連のビデオ作品

 『ガチャピン・ムックののりもの大集合 いろんな電車』ポニーキャニオン

を見ていて,びっくり。リニアモーターカーが出てくるのですが,2両編成の電車が磁気浮上したところを,人間がひとりでしかも片手で楽々押して進めるシーンがあるのです。浮上していますので,摩擦はゼロですから,考えれば当たり前なのですが,それにしても実際の映像を見るとびっくりしてしまいます。
 関係ないけど,浮上していてどうやって電気を供給しているのかなぁ。どこかに接点があるのでしょうね。(2000/3/15)いやいや誘導電流か。


・貨車を人間の力で動かすことができるか

 「20トンもあるある貨車を人間が押したら動くかどうか」という実験を実際に行った佐藤重範さんのレポートです。板倉先生も実験に参加されています。とってもたのしい内容ですので,ぜひご覧ください。佐藤さんの了解を得て公開いたします。(一部編集してあります。)下の題名をクリックすると表示します。

 佐藤重範 「重いものはどこまで動かすことができるか」

・「アヤシイ探検隊ビデオ撮影記」

 プランに出てくる実験をビデオに収めていく「アヤシイ探検隊」の活躍のレポートです。とってもたのしい内容ですので,佐藤さんの了承を得て公開します。下の題名をクリックすると表示します。(2000.4.26)

 佐藤重範 「アヤシイ探検隊ビデオ撮影記」

 佐藤さんが大幅に加筆されました。現在は2000.5.5版です。(2000.5.18)


・「5グラムと50グラムの石はどちらが遠くまで飛ぶか」

 こういう実験は,実際にやってもらうと楽しいです。ちょうど良い重さの石を探すのも面倒なので,一円玉5枚で5グラム,十円玉10枚で50グラム(48.5グラム)としました。コインはセロテープでぐるぐる巻きました。実験をするときは,コインが小さくてよく見えないので,赤のビニールテープを10センチぐらいコインにつけてなびかせました。飛んでいる様子がよく見えて,とても良かったです。事故防止にもなるでしょう。

 授業では,フォームによって到達距離が違う話もして,誰が一番遠くにとばせるかもやってもらいました。やはり遠くに投げることができる人は,フォームが違います。(2001.6.15)



・重さと速さ,エネルギー

 ボーリングで説明すると大変わかりやすいです。重いボールはゆっくり転がってもたくさんのピンを倒すからです。(2002.8.26)




・速さと衝突音の関係

20ぺの「問題1」の「速さは変わっているか」というのを音で判断することになっていますが,この根拠は,運動量から説明できます。
 「音が大きいと言うことは,それだけパワーがあるということでしょ。だから運動量が大きいと言うこと。運動量は,重さ×速度でしょ。重さは同じだから,音が大きい(=運動量が大きい)というのは,速度が大きいと言うこと。」(2001.6.28)


・スーパーボールとピンポン玉を3階から落とす
 今日は,「3階から落とす」という実験をしました。しかしうちの学校は2階建てなので,階段の隙間を使って,2階の天井から1階床にスーパーボールとピンポン玉を落としました。実験結果は見事。3メートルぐらい落下した後は,はっきりと差がついていきます。(2001.6.28)


・雨粒の大きさによって落下速度は変わるか

 この問題,ボクも大学生だったときに,考えて考えて間違いました。多くの大学生も間違えるようです。なぜなら教科書には「落下速度は質量に関係ない」と書いてあるからです。これは教科書が「自由落下というのは空気の抵抗を考えない落下運動」と定義しているからですが,手元の教科書には以下のような記述もありました。

v=gt
s=1/2gt2
より,落下するときの速度と距離は,質量には関係しないことがわかる。
すなわち,フリーフォールに一人で乗っても,二人で乗っても,同じ加速度で落ちる。(中略)
 さらに,粘土などをつけてボールの質量を変え,落下に要する時間が質量には関係しないことを確かめてみよう。

 64ぺ 『物理の世界IA』 東京書籍
 
 「空気の抵抗を考えない落下運動で成立する」ということを忘れて,現実の場面に適用するとそれは嘘になってしまいます。しかも,「実際にやってみてたしかめろ」というのですから困りものです。まじめに確かめれば確かめるほど,「落下速度は重さに関係ある」というのが証明されてしまうでしょう。(2001.6.28)



・1トンの車を水平に動かす力

 ころの実験のあとなのでみなさんよく当たります。予想を取ったあと,生徒さんの「それで結果は?」の声に,「それでは実験してみましょう」というと,みんなびっくり。駐車場で車に牽引ロープをつけて引っ張ってもらいました。腕の力だけで簡単に動くのです。みなさんたのしそうに引っ張っていました。しばらく引っ張り続けると,速度はぐんぐん増えていきます。

 この実験では,車を動かすよりも止める方が難しい(運動量がある)ので,僕が車に乗りエンジンをかけて(エンジンがかかっていないとブレーキの効きが悪くなる)いつでもブレーキが踏めるようにして実験しました。十分注意して行ってください。(2001.7.5)



・7両の列車を動かす

歯の力で7両列車を2.8メートル動かす、ギネス申請

2007.09.01
Web posted at: 15:22 JST
- CNN/AP

クアラルンプール――クアラルンプールの鉄道駅で1日までに、同国男性が7両編成の列車を「歯の力」で動かすことに挑戦、1回目の試みで約2.8メートルの記録を樹立した。歯で引っ張った最重量記録としてギネスブックに申請する。

男性はラハクリシュナン・ベル氏で、列車の重さは約328トン。線路の間に座り込み、列車につながる鋼鉄の鎖をくわえ、足を枕木に付けて、体を後ろへ倒すような形で引っ張った。

同氏は計3回挑戦したが、初回の記録を上回ることは出来なかった。

3回目の後、さすがに疲労困ぱいの様子だったが、詰め掛けた記者団に「力の源泉は瞑想と日々日々のアゴの訓練」と述べた。