■米国貨幣の謎

メールで反応をどうぞ。伝言板に反応をどうぞ。

 授業プラン風にしたレポートを用意してあります。ます最初はそちらからおたのしみください。

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更新状況

2001.7.28 政教分離の憲法の意味。文献追加。
2001.3.7 米国教会旗と国旗との関係
2001.2.14 州旗に見るモットー。「州別モットー一覧」PDFで公開。
2001.2.13 ジョージア州旗変更
合衆国のモットーが入った州旗

2001.2.1

林さんから反応をいただきました。
2001.1.14 米国大統領就任宣誓
政治的判断と裁判所の判決
2001.1.9 レポート改訂。〈米国貨幣の謎〉2001.1.9版 完成公開
2001.1.2 オハイオ州のモットーに違憲判決
文献一覧表作成。
2001.1.1 仏紙幣にある銘文の意味
2000.12.30 中国で非合法宗教施設が閉鎖されたことに対する米国政府の反応。「中国政府と米国政府
2000.9.27 米国の貨幣にこのモットーが入っているのは,米国が多民族社会であるからだと思うようになりました。「神」で民族を統一したいのです。
2000.8.28 英独仏国の貨幣と神
2000.8.27 1ドル紙幣の「神」

2000.8.26

札幌たの授サークルで発表。

2000.8.25

レポート用の貨幣の図版をPDF形式で作成。

2000.8.24

PDF形式のレポート作成。

2000.8.14

坂井さんから反応をいただきました。

2000.8.8

貨幣の図版など追記。

2000.8.7

作成

文献一覧

書籍 植村峻 『世界紙幣図鑑』 日本専門図書出版 1999.4 2,8000円 世界の現行紙幣がオールカラーで掲載されている。紙幣の図はおもにこの本からのもの。
Chester L.. Krause他 『2001 standard catalog of WORLD COIN』 krause publications U.S.$49.95 2000ページ以上もある本。20世紀の各国で使われた貨幣がすべて載っている世界のコインマニアのバイブル的な本。ただモノクロ印刷で紙質も悪いのが難点。
サリー・小林「会話教室」  (北海道新聞2000.7.3夕刊) 米国モットーの成立について簡潔に記載されている。
冨田昌宏 『お札の博物館』ふたばらいふ新書18 双葉社 99.2 829円 フランス紙幣の銘について説明があった。
ハロラン芙美子『アメリカ精神の源』中公新書 1998 あとがきに著者が「客観的というよりは,私個人の日本人としてカトリック教徒としてのものの見方が出ている本書」と記しているとおりの本で,全然おもしろくない。しかし興味深い事実もいくつかあった。
サイト American Atheists(全米無神論者団体?)
http://atheists.org/
この無神論者たちのホームページからは,モットーの詳しい成立背景や,訴訟などについての多くの情報を得た。
米国各州のモットー一覧http://www.cco.net/~paz/motto&songs.htm 米国各州のモットーなどを紹介しているサイト。
米国造幣局
http://www.usmint.gov/
コインユニバース商会
http://www.coinuniverse.com/
米国コインの図版は左記のサイトよりのもの。
World Flag Database
http://www.flags.net/
国旗の専門サイト。大変使いやすい。
ソフト システムソフト 『研究社リーダーズ英和辞典』 いつもながらこの辞典がなければ,研究は全くはかどらない。ボクの座右の書である。
小学館 『スーパー・ニッポニカ ライト版』 百科事典。欧米人の宗教意識についてを引用。
     




■はじまり

 以前にハワイへ行ったときからアメリカのおかねにある「In God We Trust」という文句が気になっていました。(左の写真は100ドル紙幣の一部。「IN GOD WE TRUST」とあるのがわかる。) 最近,それが新聞のコラムに取り上げられていて,その意味が分かりました。しかし疑問はさらに深まるばかり。(2000.8.7)



1セント硬貨


[質問]
 「In God We Trust」(我ら神を信じる)というのは,どういう意味でアメリカの貨幣に記されているのでしょうか。

予想
 ア 「この貨幣の信用は神によって認められている」
 イ 「この貨幣の偽造は神によって罰せられる」
 ウ そのほか


5セント硬貨 






 ボクは「イ」ではないかと思いました。アメリカでは裁判のときなど「神に誓って」ということをよくやります。つまり信心深いわけです。だから貨幣にも神のことを書いておけば,偽造を防ぐために心理的圧力になるのではないかと。しかし,授業書《おかねと社会》で勉強すると,庶民は政府の作ったお金をなかなか信用しなかった歴史がありますから,神の力を借りて信用させたのかも知れません。こういうように考えたのは,「In God」が先に来る倒置になっているからです。つまりこの文は神を強調しています。


 しかし,新聞のコラム(北海道新聞2000.7.3夕刊 サリー・小林「会話教室」)を読んで驚きました。正解は,「アメリカ合衆国のモットー」だったからです。ボクには「国にモットーなんかあるの」という思いが強かったのです。この文句は1864年に初めて硬貨に現れて,1956年には議会により正式に国のモットーとして採用されたのです。また1955年には,米国の全通貨に使うように義務づけられています。

 しかし「我ら神を信じる」なんてのは,ひどいモットーではないでしょうか。というのも神を信じない人にとっては賛成できないからです。さらにこれは政教分離に反しているのではないかという気もします。それにしてもアメリカという国はつくづく宗教的な国だと思います。それは「科学と宗教」というのをテーマの一つにおいた映画「コンタクト」(科学者のカール・セーガンが原作)を観てもよく分かります。そこでアメリカ人の宗教的関心について調べてみました。




[質問]
 アメリカ人の宗教的関心は,ヨーロッパ諸国と比較してかなり高いのでしょうか。

予想
 ア 大差ない
 イ かなり高い
 ウ かなり低い

25セント硬貨



 『スーパー・ニッポニカ』(小学館)に以下のようなデータがありました。

■宗教■アメリカ人は日本人の想像できないほど宗教的な国民である。ギャラップ世論調査によれば、週1回教会に行く人の比率は1955年に49%、その後しだいに低下して70年代前半には40%にまで落ちたが、70年代後半にはふたたび上昇して42%となった。宗派は千差万別であるが、全体としてはプロテスタントが圧倒的に多い。「宗教的信念はあなたにとってどれほど重要か」という質問に対して、「非常に重要」と答えた者の比率は、日本12、旧西ドイツ17、フランス22、イギリス23に対して、アメリカは56に上っていた。「神または普遍的な霊魂の存在を信じるか」という質問に対し、「信じる」と答えた者の比率は、同じ順序に、38、72、72、76に対して、アメリカは94となっていた。ヨーロッパ諸国と比べても、アメリカは際だって宗教的なのである。
(C)小学館

 グラフにしてみると,左の通りです。

 西独,仏,英がほぼ共通しているのに対して,米国はかなり宗教的関心が高くなっています。特に9割以上の人が「神または普遍的な霊魂の存在を信じる」というのですから,「神の存在」は常識といってもいいでしょう。これなら「神を信じる」が国のモットーで貨幣に記されても文句は出てこないようにも思えます。

 『少年少女科学名著全集』(国土社)の『科学と迷信とのたたかい』には,アメリカでの「進化論裁判」のことが出てきます。進化論の授業をした教師が「反宗教的だ」というので訴えられて一審は敗訴した事件です。

 このように宗教的関心の強い国ですが,こういうことに批判的な議論はないのでしょうか。



[質問]アメリカではこのモットーが「政教分離に反する」といった議論はないのでしょうか。

予想
 ア 全くない
 イ 問題になったことがある
 ウ 大問題となっている



50セント硬貨



 ホームページで調べてみると,すぐに「このモットーは憲法の政教分離に反していないのか」「裁判所の判断」などという文献がたくさん見つかりました。やはりアメリカ人もこのことが気になっているみたいです。どうも「こうした宗教的モットーは憲法違反」だとして,訴訟が起こされているようです。「American Atheists(全米無神論者団体?)」のホームページ(http://atheists.org/public.square/coins.html)では,「近い将来最高裁判所において,〈こうした宗教的モットーは違憲である〉との判断が下ることを確信している」と書かれていました。また〈「In God We Trust」の「God」は,宗教上の神ではなく,自然法のような自然の摂理を指す〉といった,まるで森首相の「神の国発言」のような解釈も見つけました。とにかくこのモットーを貨幣に記すことは法律によって定められていますから,それが違憲であるかどうかの裁判所の判断が待たれているわけです。

 それにしても,いままでボクは「政教分離」というのは〈「政治」と「宗教」の分離〉だと思っていましたら,ホームページの英語では〈「政治」と「教会」の分離〉となっていたのに驚きました。なるほど「政宗分離」でなくて「政教分離」というわけです。

 さてコインには「我ら神を信じる」の言葉の他に「Liberty=自由」と「E Pluribus Unum」と記されているのに気がつきます。後者もアメリカのモットーの一つで英訳すると「One Unity Composed of Many Parts」という意味で日本語では「多にして一つ」となります。これはフランクリンらが考えたアメリカ建国のモットーです。法律をみてみましょう。

25セント貨の反対側 

「United States of America」の文字の下に「E Pluribus Unum」の文字と鷲の絵がある。







アメリカ合衆国連邦法第31条第324項(31 U.S.C. Section 324)
「硬貨の銘刻」
 合衆国のすべての硬貨のひとつの面には,「Liberty」の文字で自由の象徴を刻印し,反対の面には,一羽の鷲の絵または彫像を「United States of America」と「E Pluribus Unum」の文字,そして硬貨の価値と一緒に刻まれなければならない。しかし10セント貨,5セント貨,1セント貨においては,鷲の絵を省略できる。「In God We Trust」のモットーは,すべての硬貨に刻印されなければならない。(以下略)

50セント貨の反対側

 写真ではわかりずらいが,鷲の頭の上に「E Pluribus Unum」の文字がある。









[質問]アメリカはたくさんの州からできています。州にも「州のモットー」というものがあります。では州のモットーにも宗教的なものが多いでしょうか。

予想
 ア ほとんどが宗教的なモットー
 イ 半分ぐらい
 ウ 宗教的なモットーは少ない





5セント貨の反対側

 上に「E Pluribus Unum」。建物の下の文字は「MONTICELLO」で建物(ジェファーソンの邸宅)の名前。











モットー

英訳

和訳

Alabama Audemus Jura Nostra Defendere "We dare defend our rights" 我ら勇気を持って我らの権利を護る
Alaska "North to the Future" --------- 未来へ向かう北
Arizona Ditat Deus "God Enriches" 神が豊かにする
Arkansas Regnat Populus "The people rule" 人民が支配する
California Eureka "I have found it" 「わかった!」
Colorado Nil sine numine "Nothing without Providence" すべては神の御心
Connecticut Qui Transtulit Sustinet "He Who Transplanted Still Sustains" 移住者は維持し続ける
Deleware "Liberty and Independence" --------- 自由と独立
Distric of Columbia Justitia Omnibus "Justice for all" 万人の正義
Florida "In God We Trust" --------- 我ら神を信じる
Georgia "Agriculture & Commerce", & "Wisdom, Justice, Moderation" --------- 「農業と商業」と「知恵,正義,中庸」
Hawaii Ua Mau ke Ea o ka Aina i ka Pono "The life of the land is perpetuated in righteousness" この地の生活は正義の内に永続される。
Idaho Esto perpetua "It is Forever" 永遠に
Illinois "State Sovereignty--National Union" --------- 州の主権・国民の団結
Indiana "The Crossroads of America --------- アメリカの十字路
Iowa "Our Liberties We Prize, & Our Rights We Will Maintain" --------- 「我ら我らの自由を尊ぶ」「我ら我らの権利を維持してゆく」
Kansas Ad astra per aspera "To the stars through difficulties" 「艱難を経て星へ」
Kentucky "United We Stand, Divided We Fall" --------- 分割ではなく連合を
Louisiana "Union, Justice, and Confidence" --------- 連合,正義と信頼
Maine Dirigo "I Direct" 自分が支配する。
Maryland Fatti Mashchii, Parole Femine & Scuto Bonae Voluntatis Tuae Coronasti Nos "Manly Deeds" & "With Favor Wilt Thou Compass Us As With a Shield" 「勇ましい行い」「好意を持って,汝盾のごとく我らを囲む」
Massachusetts Ense Petit Placidam Sub Libertate Quietem "By the sword we seek peace, but peace only under liberty" 剣により我ら平和を探すが平和は自由の元だけにあり。
Michigan Si Quaeris-Peninsulam Amoenam, Circumspice "If you seek a pleasant peninsula, look around you" 居心地の良い半島をお探しなら,あなたの周りをご覧なさい。
Minnesota L'Etoile du Nord "The North Star" 北の星
Mississippi Virtute et armis "By Valor and Arms" 勇気と武器によって
Missouri Salus Populi Suprema Lex Est "The welfare of the people shall be the supreme law" 人民の幸福が至高の法である。
Montana Oro y Plata "Gold and Silver" 金と銀
Nebraska "Equality Before Law" --------- 法の下の平等
Nevada "All For Our Country" --------- すべては国のために
New Hampshire "Live Free or Die" --------- 自由に生きるか死か
New Jersey "Liberty and Prosperity" --------- 自由と繁栄
New Mexico Crescit Eundo "It grows as it goes" なるようになる
New York Excelsior "Ever Upward" もっと高くへ
North Carolina Esse quam videri "To be rather than to seem" 外見より中身
North Dakota "Liberty and Union Now & Forever, One and Inseparable" --------- 永遠の分かつことのできない自由と連合
Ohio "With God, All Things are Possible" --------- すべては神あればこそ可能
Oklahoma Labor Omnia Vincit "Labor conquers all things" 労働はすべてを征服する
Oregon The Union; Alis Volat propriis "She flies with her own wings" 彼女は彼女自身の翼で飛ぶ
Pennsylvania "Virtue, Liberty, and Independence" --------- 善行,自由そして独立
Rhode Island "Hope" --------- 希望
South Carolina Animis Opibusque Parati "Prepared in mind and resources" 心と計画の準備
South Dakota "Under God the People Rule" --------- 神の元の人民の法
Tennessee "Agriculture & Commerce" --------- 農業と商業
Texas "Friendship" --------- 友情
Utah "Industry" --------- 産業
Vermont "Freedom and Unity" --------- 自由と統一
Virginia Sic semper tyrannis "Thus always to tyrants" いつも専制君主に立ち向かって
Washington Alki "Bye and Bye" やがてまもなく
West Virginia Montani Semper Liberi "Mountaineers are always free" 登山家はいつも自由
Wisconsin "Forward" --------- 前方
Wyoming "Equal Rights" --------- 平等の権利
 http://www.cco.net/~paz/motto&songs.htmより転載して和訳。

(この表に,州旗にあるモットーを加えたものをpdfで公開。「州旗に見るモットー」へ。)

 それにしてもラテン語など格式高い感じのものが多くて驚きました。ヴァージニア州のものは,直訳(「このように,いつも専制君主に」?)するとよく意味が分かりません。ただこの州は独立戦争の時に指導的な役割を果たしたので,それを考えて意訳してみました。

 聖書からの引用などあると,それも宗教的なモットーとなりますが,よくわかりません。神に関係すると思われるものだけ赤字にしておきました。それでみると10分の1の5州だけということになります。


オハイオのモットーに違憲判決

 「American Atheists(全米無神論者団体)」のホームページ(http://atheists.org/)によると,"With God, All Things are Possible"というオハイオ州のモットーが,政教分離を定めた憲法に違反するという判決を,2000年の4月に連邦巡回控訴院(the U.S. 6th Circuit Court of Appeals)が下したそうです。

 それに対する州政府の反応は「州はそのモットーを宗教心向上のために使う考えは毛頭ない」。キリスト教会関係者は,「オハイオ人民に対する傲慢で侮辱的な攻撃だ」。イスラム教団体も猛烈に抗議したそうです。(2001.1.2)



1セント貨の反対側

 「United States of America」の文字の下に「E Pluribus Unum」とある。







反応
坂井 美晃さん

 「我ら神を信じる」のレポート,興味深く読ませていただきました。そういえば,英語の表現ってかなり「God」が出てくることが多いですね。中学校や高校でやった英語の中にも「Oh,My GOd!!」とか「God bless you!」とか。他にも,一太郎の辞書機能でさがすと,かなり多くの言葉が出てきました。日本では「神」なんて言葉は,めったに使いませんよね?
 ある意味,英語圏の人々(特にアメリカ)は日常的に「神」という言葉を使うことに慣れているのかもしれません。
 そういえば昔,「愛と青春の旅立ち」というアメリカの映画があって,軍の士官学校を卒業する生徒たちが復唱した宣誓文のラストに「神のご加護を!」という言葉があって,びっくりしたことがありました。(日本では考えられませんね。)

 そうそう,映画「コンタクト」は好きですが,原作の小説はもっといいです。
(カール・セーガン 著:文庫本で出ています)物語の要所要所で宗教と科学の問題が出てきて,すごいです。(映画とは違う設定,エンディングも好き)難解な言葉も多いし,かなりの長編ですが,夏休みにぜひどうぞ!!

 反応をありがとうございました。
 おかねについて調べ出したら,突然興味がでてきて,『世界紙幣図鑑』2.5万円とか『WORLD COINS』などを注文してしまいました。おかねは政府が作るものだから,そこに「政府の思い」が表れているような気がします。
 きっとアメリカの無神論者たちは「GOD BLESS YOU!」なんていわないのでしょうね。「・・・を祈ります」といわない板倉聖宣先生みたいに。
 それにしても「愛と青春の旅たち」が坂井さんのメールにでてきて驚きました。あれは,ボクがすごく好きな映画なんです。映画館で見たとき,それは感動しました。
 「コンタクト」もテーマが「科学と宗教」にあるとは思ってもいなかったので,とても考えさせられました。アメリカという宗教的な社会の中で,「神を信じない」と言い切ることは科学者であっても大変なことなのでしょう。おすすめの原作を読んでみると,どうも科学者であっても「私は無神論者」とはなかなか言えないようです。そこで「不可知論者(「人間は神を認識できない)」とする説」といっています。やはりデリケートな問題のようです。

 カール・セーガン 『コンタクト』 新潮文庫

には,おもしろい場面がありました。それは北海道の札幌が舞台となるところです。要約すると「七夕飾りで大通公園が飾られていて,そこにカップルが願いの短冊をぶら下げる。日本では珍しい恋の祭。」これは事実ではありません。さらにおもしろいのが次です。

 現在,日本のほとんどの都会で七夕祭は廃れかけているという。見合い結婚が必ずしも標準的ではなくなって,実らぬ恋の悲しみは,もはや若者たちの琴線に触れることがないからだ。一方,札幌,仙台,その他いくつかの大都市では年とともに祭はますます盛んになっている。特に,札幌の場合は今なおアイヌとの混血に対して根強い偏見が残っているために,七夕伝説を思って身につまされる男女は少なくない。結婚相手の親類,先祖の家系を調査して報酬を受け取る探偵会社もある。相手にアイヌの血が流れているとわかれば,親が問答無用で結婚を破談にする例は跡を絶たない。(下巻169ぺ)

 札幌での七夕祭はアイヌとシャモとの悲恋のためだったとは・・・・絶句。北海道に「アイヌとの混血に対する根強い偏見」があるとはボクには全く思えないのですが。

(丸山 秀一 2000.8.14)


 

林秀明さん

 「米国通貨のなぞ」は,<国旗には,いろいろな民族のことを配慮している>という学習がぼくにはなされていますから,これは予想外でした。各州のモットーは,わりといい加減な感じがして面白かったです。
(2001.1.31)
反応をありがとうございます。

 このレポートをサークルで発表したときには,主催者の小笠原さんが「神の国はアメリカだった」というコメントをつけたのが印象的でした。国民をまとめるためには,国旗・国歌ばかりでなく,「神にもすがる」というところなのでしょう。裁判の行方が気になるところです。米国では,三権分立がほんとうに機能しているのには感心してしまいます。(丸山 秀一 2001.2.1)

レポート

 このレポートをまとめて授業書風にしたものをつくりました。週末の札幌たの授サークルで発表しますので,サークルに参加される方は,まだ読まないほうがたのしめると思います。(2000.8.24)

 このレポート用の「米国の貨幣一覧」の図版を作成しました。暑くて紙幣の方は,ちょっと手抜きになりましたが,なかなかのできばえだと思いますので,ご覧ください。ただしファイルが大きいのでダウンロードは大変かと思います。(2000.8.25)


 下記のファイル名をクリックするとダウンロードします。

 「米国貨幣の謎」 uscoin.PDF 303kB

 このファイルはPDF形式です。詳しくはここをクリックしてください。

 一緒に米国の紙幣と貨幣の図もどうぞ。これもPDF形式です。

 「米国の貨幣」 USkahei.PDF 1200KB

 


1ドル紙幣にある「神」


『世界紙幣図鑑』日本専門図書出版より








 米国の1ドル札にも「我ら神を信じる」というモットーが入っていますが,よく見ると,左のピラミッドの上に「ANNUIT COEPTIS」とあるのがわかります。これは「神われらの企てを嘉(よみ)したまえり」という意味で,ローマの詩人のウェルギリウス (70-19 B.C.)作の『アイネーイス』からの言葉です。つまりここにも「神」が入っていたわけです。
 またピラミッドの下には,「NOVUS ORDO SECLORUM」とあり,これは「世紀の新秩序」という意味です。右側の鷲の図には「多にしてひとつ」というモットーも入っています。このピラミッドと鷲の図は,米国の国璽(公式印章)のそれぞれ裏と表です。ピラミッドは「力の象徴」です。(2000.8.27)


■英独仏の貨幣と神

 この章の図版は『2001 STANDARD CATALOG OF WORLD COINS』 krause publications $49.95(US)よりのものです。紙幣については『世界紙幣図鑑』で調べました。


◎英国の貨幣と「神」

 英国コインにも,米国みたいな「神」が入っているでしょうか。英国のコインには,すべてエリザベス女王の肖像が入っています。そして「DEI GRATIA REGINA F.D.」とありますが,これはなんでしょうか。

 DEI GRATIA =by the grace of God =神の恵みによりて
 REGINA =queen =女王
 F.D. ==Defender of the Faith =信仰の擁護者

という意味です。ここにも神が出てきますから「英国も米国に似ている」ということになりそうですが,実はこれらの言葉はすべてエリザベス女王の称号なのです。ですから「モットー」のような意図は全くありません。

 また紙幣の方ですが,これも全部表面に女王の肖像です。そして称号もモットーもなにもありません。


 ついでに英国から独立したアイルランド共和国のコインですが,これが全部に「アイリッシュ・ハープ」が入っています。さらに紙幣にもすべて「ハープ」が入っています。国の成り立ちを考えると「うーんなるほど」と思ってしまいます。詳しくは【世界の国旗】特設ページへ。











◎独国

 硬貨には必ず鷲のマークと国名が入っていますが,モットーのようなものは入っていません。紙幣にもモットーみたいなものはありません。


◎仏国

 紙幣にはなにか銘文のようなものが書かれています。硬貨には「LIBERTE・ EGALITE・ FRATERNITE」と一部の記念硬貨を除いて入っています。フランス語なのでよく意味が分かりませんが,最初の言葉は「自由」でしょう。とするとあとのは「平等」「博愛」にちがいありません。(2000.8.28)

 すべての紙幣に入っている銘文の意味が分かりました。(左の図で赤線で囲ってある部分)
 「刑法第139条は,銀行券を偽造,変造した者,それを使用した者を終身懲役刑に処し,それをフランスに持ち込んだ者も同様とする。」(『お札の博物館』139ぺより)

 フランスでは,終身刑が一番重い刑罰だそうです。(2001.1.1))




中国政府と米国政府

 新聞報道によると,〈浙江省温州市で11月から年末にかけて,当局に未登録のキリスト教会や仏教,道教の寺院3011カ所以上が「非合法宗教施設」として閉鎖,撤去された〉とのこと。これは〈気功集団「法輪功」事件で信仰の力に脅威を感じ,未登録団体の放置が迷信の流行にもつながるとして,多すぎる宗教施設を「整理」する方針を打ち出した中国指導部の方針〉に基づくもの。

 この件について米国政府は,どんな反応をしたのでしょうか。

予想

 ア 内政干渉だから無反応
 イ 「信教の自由に反する行いである」と批判
 ウ 「迷信撲滅」と賛辞
 エ 「キリスト教会を破壊するのは残酷」と批判
 オ 「民主的な行いである」と賛辞







 〈米国務省の報道官は,中国当局がキリスト教会を破壊したとして「極めて残酷な仕打ち」と強く批判,外交ルートを通じ中国に抗議した〉とのことです。米国は,あちこちの国での出来事に対して正義感を振りかざすことが多い国です。しかし,この中国のひとつの市が行ったことに対する米国の反応はとても過敏です。またその理由が「人道上」とか「民主的」なものではなく,宗教的であるところがおもしろい。そして仏教や道教の寺院が破壊されることは何の問題もなく,キリスト教教会の破壊が問題なのです。米国の倫理は,その底辺にキリスト教があるのは間違いないことです。米国の本質が見えたような気がします。(2000.12.30))


政治的判断と裁判所の判決

 「全米無神論者団体」のサイトから歴史的にまとめてみました。根本的原因は冷戦にあったようです。

■政治的判断


 1861年のことです。全米改革派教会(National Reform Association)のワトキンソン牧師(the Reverend M.R. Watkinson)は,全米のプロテスタント派を統合し,「米国はユダヤ・キリスト教国(唯一神を信じる)である」とするキャンペーンのひとつとして,財務長官に「硬貨に〈我ら神を信じる〉」を入れるように要請しました。そして票集めのために宗教界を無視できなくなっていた議会は「1864年4月22日からの硬貨製造に〈我ら神を信じる〉」と入れることを可決しました。
 さらにワトキンソンは,「我々,米国の人民は,謙遜して全能の神を政府のすべての権威と力の源であると認識して,地上の支配者である主イエス・キリストの啓示はこの地の至高の法としてキリスト教政府建設のため・・・・」という新しい前文を憲法に付けることを請願しました。全米改革派教会には,最高裁判所判事や何人かの政府長官,著名な実業家も含まれていましたが,この請願は却下されました。
 紙幣にも〈我ら神を信じる〉が入れられるようになったのは,それから百年ほど後のことです。1955年にアイゼンハワー大統領が「すべての通貨に〈我ら神を信じる〉と入れる」という法律Public Law 140 とPublic Law 851 に署名しました。さらに翌年にはモットーをそれまでの「多にしてひとつ」から「我ら神を信じる」に置き換えるという法律にも署名しました。これは東西冷戦により,共産主義を極度に警戒したため,無神論の共産主義に対抗して「大衆を信心深くさせる」宗教振興的政策を採ったのです。
1954年に議会は満場一致で「忠誠の誓い」(米国民の自国に対する誓約)に,「神の元に(UNDER GOD)」という文句を入れる法律を決議しました。また,すべての連邦裁判官や判事に「神のご加護を(So help me God)」を誓いの言葉に含める法律も成立しました。
結局,1957年10月以降に発行されたすべての紙幣には「神を信じる」の「新しい米国のモットー」が入れられています。

■裁判所の判断


 アメリカの憲法にもはっきりと政教分離は定められています。そこで無神論者の団体が「このモットーを法で定めるのは憲法違反だ」として1978年に裁判所に提訴しました。
 その無神論者の団体(American Atheists)の設立者であるオヘアさん(Madalyn Murray O'Hair,1919〜現在行方不明)は,自分の子どもが学校で聖書や祈祷を意志に反して強制されるのに対して,1959年に「公立学校での聖書講読と祈祷は憲法違反である」として訴えを起こしました。これに対し連邦最高裁判所は1963年に「憲法修正条項第1条および第14条の〈信教の自由と政府と教会との分離〉を侵すものである」として,「公立学校での祈祷と聖書講読を禁止する」判決を言い渡しました。オヘアさんは勝訴したのです。オヘアさんはその後も,一切の公共機関から宗教色を排除する運動の中心として活動しました。

合衆国憲法修正条項
第1条
議会は宗教の発展を擁護するような,または信仰の自由を禁止するような法律を定めてはならない。
第14条
州議会も連邦議会と同様に,宗教の発展を擁護し,信仰の自由を禁止するような法律を定めることは無効である。

 さて「我ら神を信じる」裁判の結果はどうなったのでしょうか。連邦巡回控訴院の判断は,宗教的な政府の意図をほのめかしながらも,「そのモットーの使用は,愛国的,または記念碑的なもので,〈宗教心の国民への浸透に政府が荷担する〉と思われるような点はない」というものでした。続いての訴訟も「そのモットーが明らかに宗教的なもので,神や神学に基づいてのものであること」を立証できた他は,やはり「違憲ではない」との判断に終わりました。
しかしオヘアさんたちは,「連邦最高裁判所が違憲判決を出すこと」をあきらめてはいません。そして議会の委員会などに「貨幣に記すモットーは〈多にしてひとつ〉の方がよい」と提案しています。




大統領就任宣誓

 米国大統領の就任宣誓は,米国での宣誓によく見られるように(もっともほかの宣誓はこの大統領の宣誓を模倣したものだろう)聖書に左手を載せて,右手を上げて宣誓します。どの大統領就任宣誓も宣誓の文句は同じで,憲法に定められているからです。

 「私は米国大統領の職務を忠実に遂行し,全力を尽くして米国憲法を保全し,保護し,擁護することを厳粛に誓う」

 初代大統領のワシントンは,この宣誓の後に「神のご加護を」と付け加えました。それでワシントン以降の大統領もみな,宣誓の後に「So help me God」と付け加えています。

 信教の自由が保障されている国とはいえ,これでは「キリスト教徒以外は大統領にはなれない」みたいですね。(2001.1.14)

 ハロラン芙美子『アメリカ精神の源』中公新書によると,大統領就任式には,聖職者の祈祷があります。そこで祈祷をする聖職者は,プロテスタント牧師,カトリック神父,ユダヤ教ラビです。やはりアメリカの神は「ユダヤ・キリスト教」の神のようです。(2001.7.28)


政教分離の憲法の意味

 ハロラン芙美子『アメリカ精神の源』中公新書には,次のように書かれている。

アメリカは政教分離のはずなのに,なぜ大統領就任式,議会開会式,軍隊司令官交代式などの国家行事で聖職者の祈祷が必ず含まれ,全国テレビでも放映されるのかという疑問に対する答え。合衆国憲法のいう「政教分離」は宗教が政治に介入するのを違法とする意味ではなく,国家が特定宗教あるいは教会を国教としないと宣言したから,国民の信仰の自由が保障されたという意味である。憲法起草者たちは政治と宗教を分離したとはいっても,人間は創造主の前には平等であり,人間を導くのは神の意志であるということについては一点の疑問も持たなかった。(294ぺ)

 さらに著者は,「この神とはユダヤ・キリストの神であり,将来キリスト教徒以外の大統領が出るとは考えにくい」と述べている。

 この大統領就任式の聖職者の祈祷は,プロテスタント牧師,カトリック神父,ユダヤ教ラビによって行われるとのこと。やはりアメリカの神は「ユダヤ・キリスト教」の神のようです。

 また毎年連邦最高裁判所が開かれる前に,判事が公平で正義に基づいた裁判を行えるように神の加護を祈る特別ミサが,カトリックの信者であるなしにかかわらず,判事全員とホワイトハウス,連邦議会から多数参加してひらかれるのだそうです。同じ日には,各州都においても同様のミサがあります。


(2001.7.28)


ジョージア州旗変更

 World Flag Databaseなどによると,ジョージア州の州旗が「それまでの南部連合の意匠の強いものに反対する意見により」,州の紋章を中心にしたものに,2001.1.31に変更になりました。そして,「In God We Trust」のモットーが入りました。

 旗の下にあるのが「ジョージアの歴史」で,右から2番目にあるのが,もとの州旗です。

 「南部連合を捨てて,神を取る」なんて変化は,やはり米国は,「神」でまとまる国なのだなぁと思わせてくれます。

(2001.2.13)





合衆国のモットーが入った州旗

 新しいジョージア州旗には「In God We Trust」のモットーが入れられました。そこで他の州旗にも,このモットーが入っているものがあるのか気になりました。さてどうでしょうか。

 さがしてみたところ,フロリダ州がそうでした。でもこれはフロリダ州のモットーです。だからジョージア州旗に「我ら神を信じる」のモットーが新しい入ったのには,何か意図があってのことだと思われます。

 ミシガン州には「多にしてひとつ」のモットーが入っています。

 各州旗に入っている言葉の意味を調べてまとめたくなってきました。(2001.2.13)


州旗に見るモットー


 州別モットー一覧 USmotto.PDF 23KB 

 州別のモットーと州旗にある文字とモットーを一覧表にしました。タイトルをクリックするとダウンロードします。このファイルはPDF形式です。 

 州旗にある文字を調べました。2つ以上の年号が入っているものが多く,おもしろいです。米国建国のモットーである「多にしてひとつ(多くの州の連合でできたひとつの政府)」を州旗に入れているのが,ミシガン,ノース・ダコタ,ウイスコンシンの3州です。「我ら神を信じる」は,州のモットーでもあるフロリダと,ジョージア。多くの州旗には,州のモットーが入っています。米国の地図でグラフにしてみたくなります。(2001.2.14)


教会旗

 米国の教会旗は,白地に青の十字です。では,この教会旗と米国国旗との関係はどうなっているでしょうか。

 米国は国旗を大切にする国で,国旗は常にあらゆる旗の最上位の位置に置かれます。しかし,教会旗だけは,例外で国旗の上に置かれるというのです。(スミス 『世界旗章大図鑑』平凡社 100ぺ)うーん,やはり「神の国アメリカ」だなぁ。(2001.3.7))

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